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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

「タクシー運転手がくも膜下出血で事故」はどうやったら防げるか。

更新日:2023年8月19日

タクシー運転手が運転中にくも膜下出血を起こし、歩道に乗り上げて歩行者が受傷、運転手と歩行者1人が亡くなるという痛ましい事故がありました。


くも膜下出血に注目が集まったこともあり、Yahoo個人に記事を投稿しました



個人として「くも膜下出血を防ぐ」方法としては脳ドックは有効な部分があります。

(「本当に治療が必要な人だけを抽出する」のは難しく、COVID-19におけるPCR検査のようなところがあります)


ところで、3月にも同じような事故が、現勤務地の近くでありましたが、同じような事故は時々起こっています。



国土交通省に統計があり、今回のような歩行者を巻き込むような事故以外でも、脳血管障害(脳卒中)による事故が起こっていることが分かります。

くも膜下出血, 未破裂動脈瘤, 脳動脈瘤, 開頭クリッピング術
脳卒中が原因と判明した職業運転手の事故

最近は減ってきていると思いますが、公園などに車を止めて喫煙しているタクシー運転手さんを見かけることがあります。

また深夜帯を含め、長時間緊張を強いられ、睡眠時間も不安定になりがちで、しかも比較的ご高齢の運転手さんも多いことを考えると、脳卒中のリスクが高い職業といえるかもしれません。


もちろん健診が義務づけられており、中には高齢従業員全員に脳ドックを受けさせる、というような事業会社もあるようです(例:つばめ交通)。

しかし、実際に脳MRIを受けて、未破裂脳動脈瘤が見つかった場合でも、過去ブログで述べてきたように対応は一筋縄にはいきません。


それなりに大きい(例えば10mm大)動脈瘤が見つかった場合は、医学的な見地からも治療を勧めることになるでしょうが、それでも治療自体にリスクがゼロではないため、手術を強制するようなものではないと考えられます。

また小さい動脈瘤が見つかった場合に、「では内勤のみに」という対応は現実的ではないでしょう。

「日中の乗車のみに限る」としても、それで大丈夫なのか保証はありません。


また、脳ドックを受けていたにも関わらず、脳ドックの数ヶ月後にくも膜下出血を起こす、ということも実際にはあります。


事業会社が脳血管障害による事故を防ぐためには、健診は大事です。

しかし、やはり車側の安全装置(意識を失うなどの状態を検知して、ブレーキをかけるなど)の開発の方が現実的で重要だと考えます。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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