脳外科の手術を受ける方でも、糖尿病を患っている方は多い。
糖尿病の方は入院されると、食前や寝る前に血糖値を測り、場合によってはインスリンで血糖値をコントロールすることになる。
これは、血糖値のコントロールがうまくいっていない方は、全身麻酔のリスクが増し、手術前後の合併症が起こる可能性が高くなるためだ。
食事に関しても、どこの病院でもエネルギー制限食というメニューがあり、1日1200~1800 Calに制限することがある。
「糖尿病だから、エネルギーをコントロールする必要があるんだな」という認識でいたのだが、今日配信されてきたMedical Tribune 山田悟先生のコラム
「衝撃! エネルギー制限は不要・無用だった」
という記事。
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糖尿病に関してはときどき勉強はしているが、さすがに「えっ!?」ということで、読んでみた。
まず紹介されていたのは、山田Dr.も関わった研究で、
Body Mass Index (BMI = (体重)/(身長)x(身長) 30未満でHbA1c 8.4未満などいくつかの基準を満たす2型糖尿病の患者さんでは、健常者と比べてエネルギー消費量に差はなかった、ということ。
つまり、糖尿病だから代謝が落ちている、というわけではないようだ。
もっとびっくりしたのは、研修医のころからお世話になってきた(?)、上記「エネルギー制限食」というものにちゃんとした科学的根拠がないということ…
糖尿病の管理に関してもガイドラインがあって、当然その中に食事に関する項目もある。
コラムから引用すると、
『第3章「食事療法」の項目で、(中略) あくまでも標準体重を基に身体活動係数を乗して設定するというエネルギー制限食のみが推奨されていたからである。』
糖尿病を患っている患者さんって、脳外科で担当させていただく何十倍もの数がいる。
それ故、このガイドラインというのは大きな影響力を持っていると思うが、内科の重要なガイドラインで、「根拠がない」って何でしょうか?
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じゃあ、どうすればいいの?という事に関しては、糖質制限を推している山田Dr.らの論文が紹介されていて、
Nutrients. 2018 Aug 13;10(8). pii: E1080. doi: 10.3390/nu10081080. Dietary Approaches for Japanese Patients with Diabetes: A Systematic Review.
日本で発表された、糖尿病と食事に関する論文をsystematic reviewしたもの。
結論を述べると、大規模なランダム化比較試験はなく、採択された研究は少ないが、
エネルギー制限を支持する論文はない、
糖質制限を行った群の方がHbA1cが下がった、
とするものがあったということで、少なくとも短期的には糖質制限の方が優れていそうだ。
糖質を減らすと摂取カロリー(エネルギー)も減るのだが、エネルギーを減らす目的でタンパクや脂肪を減らすのは誤り、ということだろう。
この論文の中では、肥満でない2型糖尿病の患者さんにエネルギー制限を加えると、骨塩が減るという(大規模)研究の結果にも言及されている。
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専門ではないが、日本の栄養指導はエネルギーコントロールに偏りがちということを聞いたことがある。
また、栄養士さんの政治力?が強いので、「食事に関しては医者は黙っとれ!」という圧力があるという、都市伝説的な話も聴いたことがあるが、いつまでも「根拠なし」というガイドラインはマズいだろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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