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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

反最大倍率至上主義?

脳外科は脳という機能満載の場所で、非常に細かい操作をする科だが、

全ての手術、操作を高倍率で手術するのが良いかというと、必ずしもそうではない。


確かに倍率を上げて、狭い範囲で細かい作業をすると、術者本人は「集中している感」を感じられるし、「没入感」は脳外科をはじめとする顕微鏡手術の魅力の一つである。


若い患者さんの半球間裂で癒着が強い場合などは、最大倍率でも「もっと倍率上がらないのか !」と思うことさえある。

また、バイパス手術では必要な操作空間がもともと狭いので、針の置き方などを工夫すれば、最大倍率が必要十分であったりもする。



しかし、高倍率にもデメリットがある。


  • どうしてもstrokeが小さくなってしまうため、手術の進行が遅く、時間がかかる。

   (バイパスの運針などはもともとstrokeが小さいので問題にならない)

   

時間がかかっても丁寧に行う方がよいと思うかもしれないが、脳の同じ部分をretract (圧迫)していると、その部分が傷んでしまうし、綿片が脳に癒着してしまうこともある。

  • また、深部の操作になるにつれて、手前が見えなくなってしまうため、道具の出し入れで手前の脳に傷を付けてしまうかもしれない。


ではどうすればいいか?


これに関しては昭和大学の水谷教授がどこかに書いていたが、


「操作する部分がきちんと見える”最低”倍率で操作する」


のが効率的だ。


そのためにはdynamicに顕微鏡の倍率を変える必要がある。


一つ一つの操作を行うたびに、今の倍率が最適かどうかを考えながら行うのが、無駄のない顕微鏡手術に繋がるのではないだろうか。



ちなみに、途中で倍率を変えるシーンが入っていると、ビデオ編集を行うとき、場面の切り替えがよく分かって便利なので、お薦めである。



(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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