Medical Tribune Onlineに出ていた東北大学大学院歯学研究科からの論文
茨城県健診受診者生命予後追跡調査事業の1993~2013年のデータを用い、追跡不能者などを除く96,384例(男性33,018人)の予後を解析。
死亡データベースから交通事故死を取り上げ、喫煙習慣と交通事故死との関連を調べた。
結果、非喫煙者7,335人の中で31人が交通事故で亡くなっていたが、1日20本以上吸う男性では11,403人中62人が亡くなっていた。
年齢や飲酒状況を調整しても、男性では「1日20本以上する喫煙者」は非喫煙者に対して1.54倍交通事故死しやすいという結果だった(95%CI 0.99-2.39)。
女性ではこのような差は出なかったようで、それは死亡例が少ないことで統計的なpowerが出ないと考察している。
タバコと交通事故というのはにわかに関連づけられないように思われるが、著者らは、
「運転中に火を付けたり、灰の処理をしたりすることに気を取られる」
という、注意の問題としており、「運転中の喫煙の危険性について周知すべき」としているが、本当にそうだろうか?
交通事故の死亡統計というのは、必ずしも運転者に限って死亡原因としている訳ではなく、助手席に乗っていた人や、車に轢かれて亡くなった方も交通事故死に含まれている。
また、discussionでも述べられているが、船の事故死などもこの統計に含まれており、タバコの取り扱いによる注意の問題以外の因子が絡んでいる可能性がある。
一つの可能性ではあるが、男性のほうがCOPDになる人も多く、またそこまでいかなくても、重症の交通外傷を負った際に、肺炎などの合併症を起こしやすいということではないだろうか。
あるいはこの期間にシートベルトやエアバッグが急速に普及しているが、特にシートベルトに関しては、喫煙男性に付けない人が多かったという可能性もある
(死亡例が<100人なので、それくらいの差が出てもおかしくないように思われる。)
あくまで勝手な解釈であり、疫学の世界がどれくらいのNを必要とするか分からないが、せっかくそれなりの数&期間のデータがあるのにdiscussionが運転中の注意散漫に偏り過ぎているために、結論がイケてない気がする。
Co-authorやreviewerが、もっと練ってあげれば良かったのではないだろうか。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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