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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

慢性硬膜下血腫の洗浄

慢性硬膜下血腫はつくづく不思議な病気で、小孔からチューブを入れるだけでも治るとされている。

日本では「穿頭血腫除去洗浄ドレナージ術」という術式が設定されていることを考えると、やはり血腫を抜いた後、洗浄するというのが標準的なのだろう。


とりあえず血腫を抜くことに異論はないだろうが、と思ったが、腔内にチューブを入れて、洗浄する前に吸引除去しない方がよいと教わってきていたドクターがいたので、そういう病院(大学)もあるのかもしれない。


つまり、流れ出てくる血腫は吸引して除去するが、それ以上は、中にものは入れずに水を足していくらしい。


血腫を減らさずに生理食塩水を追加する、唯一と思われるメリットは、シリコンチューブが脳に刺さったり接しているときに、脳組織を”吸ってしまう “という合併症を避けられることだろう。

しかし現在日本で流通しているシリコンチューブでそのような事態になることは、さすがに考えにくい。


一方、血腫が穿頭部分まで貯まった状態で洗おうとすると非常に非効率だ。

つまり、なかなか血腫の濃度が下がらないのだ。


これは血腫を最初に取り除く場合も同様で、穿頭部位まで50 ml貯まっているときに、50mlの生食を加えても濃度は50/(50+50)、つまり半分くらいにしか薄くならない。

(中学生の化学の問題)

実際にはあふれ出てくるので、さらに効率は悪い。



そこで、いったん腔内の血腫を可及的に抜いてしまえば、5ml残っていたとしても、10倍薄くなることになる。


排液の色を洗浄終了の基準にしているなら、いったん抜いてから洗う方が合理的だし、手術も早く終わる。


なんといっても局所麻酔でやっているのだから、患者さんもその方がだろう。



ただ、そもそも肉眼的に色が薄くなるまで洗浄することに、本当に意味があるのだろうか?

(N.Aoki先生らの報告を見ると、おそらくない)


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11685612

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16598410


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)




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