少し前だが村中医療器さんにsaddle型の椅子を試させていただいた。
残念ながら、座面が回転しすぎるため、ちょっと安定性に欠けるように思われ、自分のスタイルには合わなかったので、購入には至らなかったが、クッション性や、座骨の安定感、エッジでの圧迫がないことに関しては長い手術には良さそうに思われた。
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脳外科の手術では、各操作で、最適な角度に顕微鏡を動かし、視軸を変えて、脳の圧迫(=負担)を極力減らすようにするため、機動性が必要だ。
脳外科の多くの顕微鏡手術では、座って手術を行う病院が多いと思うが、少なくとも短時間の比較的単純な(=使う道具の少ない)手術であれば、本当はスタンディングで行うのがベストかもしれない。
(若い頃の福島孝徳先生も立って手術されていた。)
ただ、時間のかかる顕微鏡操作なら座って行う方が疲労も少なく、実際には「手」も安定するように思う。
また手術の際には、最近では顕微鏡のほか、止血のためのバイポーラスイッチ、ドリル、超音波吸引器などを足でon/offするが、利き足で全ての操作を行っていると、身体にひずみというか、歪みが起こりそうだ。
Prof. TureやProf. Hernesniemiのように、顕微鏡をマウスコントローラで動かすというのは、足の操作を減らす一つの手ではあるが、よだれ対策が必要で、専用のコントローラを別途購入しなければならず、日本ではあまり普及していない(と思う)。
現実的にはやはり座って手術というのが標準的だろう。
椅子に座って手術するといっても、どかっと安楽椅子に座って行うわけではない。
脳外科で用いる椅子は通常、足で高さ調節可能であり、また車輪が付いていて左右にも動けるようになっていて、機動性が担保されている。
この点で、おそらく一世を風靡した?杉田椅子は、やはりオールドファッションだと思う。(とにかく移動が遅い)
ともあれ、手術用椅子の選択は重要だ。
個人的には、いざとなれば10時間でも20時間でも、一定以上の集中力を保てるような、楽で、かつ適度な緊張感のある姿勢がよいと思っている。
この姿勢に関しては、やはり足で操作するバーが、車輪の近くに付いていることがほとんどだが、特に若いドクターはあまり使わないことが多い。
顕微鏡の角度・位置を変えると、当然接眼レンズの高さも変わる訳だが、それを自分の身体をねじって、あるいは縮めて対応してしまうのだ。
でも、この方法で高さを合わせていると、必ず肩こり&緊張型頭痛に悩まされることになる。
なので、顕微鏡の向きを変える際は、「接眼レンズの向きの変更(目の高さがなるべく変わらないようにする)→顕微鏡の向きの変更→椅子の高さを変えて、楽な姿勢を保つ」という操作をルーチンにするのが良いと思う。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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