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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

転移性脳腫瘍に対する放射線治療

更新日:2018年7月28日

今日の抄読会で田部井医師が紹介してくれた論文


JCOGという日本の癌治療の元締めのような集団があり、現時点で一番有効とされている治療 vs それより効果が期待される治療を、ガチンコで前向き研究している機関があるが、その研究の一つ。


J Clin Oncol. 2018 Jun 20


脳腫瘍の中には、体の他の部分から転移してきた腫瘍、いわゆる転移性脳腫瘍と呼ばれるものができることがある。


最近ではサイバーナイフやガンマナイフといった精度の高い定位放射線治療が可能になっているが、それでもサイズが大きいものに関しては開頭手術を行うこともある。


開頭手術後は、手術中にがん細胞が周囲に散らばっている可能性を考え、脳全体に放射線をかける全脳照射が標準治療とされているが、全脳照射後時間が経過すると、記憶障害や認知症などの高次脳機能障害が問題になることがある


最近では、分子標的薬などの化学療法の成績が向上し、転移性脳腫瘍を治療した後の生存期間が長くなってきていることから、この高次脳機能障害の副作用が問題となってきている。

そのため、脳全体に放射線を照射する全脳照射より、病巣のあるところだけに集中して放射線を当てる定位放射線治療(サイバーナイフ、ガンマナイフなど)の方がよいのではないか、という疑問が出てくる。


転移性脳腫瘍,サイバーナイフ,定位放射線治療
サイバーナイフ

そこで、この研究では、

  • (転移性脳腫瘍は複数できることがあるが、)その数が4つ以下。

  • 一つは開頭手術が必要な直径3cm以上の転移性脳腫瘍があり、かつ3cm以上のものは一つだけ。

という、結構対象が狭い(少ない)条件で、術後3週間以内に全脳照射か、サイバーナイフなどの定位放射線治療を行い、亡くなるまでの期間、および転移性脳腫瘍の再発に関して、非劣性を調べた。


結果としては生存期間の中央値は両群とも15.6ヶ月で差が無かった。

1年生存率、3年生存率はそれぞれ脳照射 61.1%, 27.1%, 定位放射線は56.7%, 27.2%だった。


転移性脳腫瘍, サイバーナイフ, 日赤医療センター

全脳照射では21.9%が頭蓋内の問題で死亡。定位放射線治療では21%でやはり差が無かった。

結果として、このような患者さんに対しては、定位放射線治療は全脳照射に”劣らない”(非劣性)ということが証明された。


ちなみにこの調査では高次脳機能はMMSEのみであり、十分な評価とは言いにくいのかもしれないが、それでも治療3ヶ月時点での記憶障害、認知機能障害は全脳照射群で多かった。


裏話だが、この研究は10年強前に始まったものであり、”別の雑誌に投稿したが、「今更全脳照射と比較することに意味があるのか?」みたいなコメントとともにrejectされた”ということ。癌の治療パラダイムが変わってきていて、長期的なQOLを保てない治療は淘汰されていくのかもしれない。


数えるのが嫌になるくらい病巣があるとか、髄膜播種と呼ばれる、脳の表面全体に広がったような病変以外は、全脳照射の対象にならないのかもしれない。



日本赤十字社医療センター サイバーナイフセンターのページはこちら


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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