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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

一生、薬を飲んで下さい

先日の話と関わるが、一生薬を飲んで下さいという状況がある。


脳外科領域でいうと、例えば脳梗塞を起こされた方にアスピリンなどを処方する場合だ。

高齢で動脈硬化が原因になっている場合や、生命がかかっている場合など、仕方が無い部分があるかもしれない。


しかし、例えば症状のない未破裂脳動脈瘤で、ステントを使わなければいけない場合はどうだろう?


単純なコイル塞栓術であれば、3ヶ月程度抗血小板薬を内服して終了になることが多いが、ステントを用いて治療した場合には、動脈の中に入っているステント(金属)に血栓ができ、詰まって脳梗塞を起こす可能性がある。


そのため、3~12ヶ月くらい2種類の抗血小板薬を飲んでもらい、その後も内服薬を継続することが多いのではないだろうか?

(内服を中止してもよいかどうかに関して、コンセンサスはまだない)


未破裂脳動脈瘤, ステント,血管内手術
抗血小板薬2種類だと1種類より脳出血が増える (脳梗塞後の調査, MATCH trial (2004))

その場合、治療の説明に

「ステントを使うので、完全に詰められると思いますが、その後、一生 薬が必要です。」とか、

「治療は上手くいきました。つきましてはこの薬を一生飲んで下さい。」

と説明しているのだろうか。


もしそうなら、副作用のリスクもある薬を「一生」飲むって、相当軽いように思う。


大袈裟な話にはなるが、大きな地震で避難を余儀なくされ薬が手に入らないという報道を見たり、社会保険が破綻する可能性だって全く無視できない社会保障費事情で、特に若い人に「一生飲まなければいけない薬」を勧めるのは慎重になるべきではないか?


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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