top of page
  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

iPadによる直前予習?の効果

iPadを使い、マルチメディア資料をあらかじめ見てもらうことで、病気と治療(手術)に関する理解が深まるか?という研究。


Can J Surg. 2018 Oct 1;61(5):339-344.


比較的知られていることだが、情報が多いことは、必ずしも良い判断につながるわけではない。

特に手術のような、場合によっては生命に関わるようなイベントの場合には、ストレスによって「頭に入る」情報に偏りが起こることがある。


一方、残念ながら自分もそうだが、特に外来で十分納得してもらえるだけの時間が取れないこともよくある。

(そのような場合で、とくにご自宅が無茶苦茶遠いとか、緊急性が低い場合には、いったんご自宅でよく検討してもらうことになる。)


そもそも、一生に関わるような決断を10分や15分の話し合いで決めるというのは疑問だが、ケガや脳卒中の際はそうも言っていられないので、別の話になる。


この研究では、外科医から手術の目的、リスク、代替手段などの説明、いわゆるインフォームドコンセントを受ける前に、あらかじめ、臨床経験のない医学生達と作成した教材を見てもらうことで、病気や治療(手術)に対する理解が深まったか、を調べた。


38人と数は少ないが、通常通り外科医が説明するだけのグループ(18人)と、その前に教材を見て予習するグループ(20人)で、病気と治療に関する質問に答えてもらい、成績を比べた。

その結果、面接前の知識は両方のグループに差が無かったが、面接後にもう一度、同じ質問をすると、予習したグループの方が少し点数が良かった(理解が進んだ?)


この研究では三叉神経痛や脊椎手術など病気の種類がいろいろあり、患者さんの年齢や、もともとの病気に関する知識などに影響される可能性があり、そのことを考えると38人という数はかなり小さい。

また本文でも述べられているが、カナダの研究で、英語が母語でない方も含まれていることもバイアスになる可能性がある。


教材の内容に関しても、外科医が作っていることで、効果を強調しすぎたり、リスクが伝わりにくくなっている可能性がないかというところも気になる。


ただ、一度聞いたことのある内容の方が、腹落ちしやすいということはあると考えられ、説明が繰り返しになることは避けられるのではないだろうか。


またiPadではなく、webに上げることで、何度も見られるのでは?とも思った。しかし実際に説明する際の理解を助ける、という目的であれば、やっぱり面談前に見てもらう方が、短期記憶に起こっている間に説明できるメリットがあると思われる。


*******************

少し違う話かもしれないが、手術の説明の際、音声を録音される方もいる。

そもそも専門的な内容を一回聞いただけで理解できる人は非常に限られているだろうから、むしろ録音なり録画して、繰り返し聞いてほしい。


そういうときは、普通に「録音しますが、いいですか?」と言っていただければと思う。

鞄の中でごそごそされる方が気になるものです。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

最新記事

すべて表示

くも膜下出血を起こさない脳動脈瘤

一般的に大きさ5mmというのが(日本人では)治療を考える上で一つの基準になりますが、サイズが大きめでもくも膜下出血のリスクは高くないという部分もあります。 代表的なものに『海綿静脈洞部内頸動脈』にできる動脈瘤があります。 どうしてくも膜下出血を起こしにくいのか、というかほとんど起こさないのですが、もちろん理由があります。 くも膜下出血を起こす場所ではないからです。 脳は頭蓋骨の内側にあるわけですが

bottom of page