ヒトは視覚から多くの情報を得ている。
上記タイトルは、そのことを端的に表していて、医学部生の頃から「さもありなん」と単純に思っていた。
Twitter上で流れてきた論文 (日本語)
引用『「視覚8割説」は広く取り上げられる割に、具体的数値算出の根拠を示した文献が示されないまま、その言説が広く流通している例の典型である」』
いろいろ勉強になる論文だが、その手の出典の問い合わせをまとめたQ&Aサイト「レファレンス協同データベース」というものがあるようだ。
それによると、「視覚8割説」の根拠として2つの文献にたどり着くという。
(その1つは「屋内照明のガイド」)
また視覚の優位性に関する神経生理学的な根拠としては、1970年代の論文。
(各感覚器官の神経細胞の数) x (単位時間の神経細胞のspikeの回数)
から脳への入力を算出するというもの。
感覚細胞の分布密度は5感それぞれで異なるが、数えられる(推定できる)数値であり、spikeの回数も数えることができる。
相対評価としては視覚が80-90%を占めるということだが、読速度や聴覚の言語理解に関する実験からは、脳が実際に処理できる情報量は視覚40 bit/秒、聴覚 30 bit/秒ということ。
つまり、入力される情報量 (=10の8乗-9乗 bit/秒)の100万分の1しか利用していないということになる。
結局、入ってくる情報の大半は無意識下に処理され、エッセンスだけが抽出されているのだろう。
それでは無意識下で処理された、あるいは失われた情報はどうなるのだろう?
フォトリーディングⓇという速読法では、この無意識下の情報が記憶に残っているという立場だが、個人的な経験では、自分の利用可能な記憶領域にはほとんど残っていなさそうだった。
機械学習でも次元削減のような事が行われているが、余計な情報が残っていると、生物学的にはエネルギーの無駄になるはずだ。
視野に「捕食者が写っている」とか、「崖が近い」などの情報以外は、我々のHunter-Gatherer脳からは失われている可能性が高いのではないだろうか。
ちなみに論文中で触れられているように、ヒトは脳の10%しか用いていないというのは神話です。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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