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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

脳腫瘍手術でのバイポーラ凝固(装置)

更新日:2023年8月9日

脳神経外科の手術では バイポーラという、ピンセットの先端から電気が流れるようになっていて、つまんだ組織に電流を流してタンパク質を変性させ、主に血管を詰まらせて止血する道具が不可欠です。


この バイポーラという道具は、うまく使わないと組織が焦げて先端にくっつくことで、絶縁してしまい、うまく止血効果が得られないということが起こります。

また、止血されたと思ったら、先端に組織が焦げでくっついており、引っ張った拍子にまた出血するということが起こりえます。


最近では、焦げ付きを防止するために パイポーラの間から水が出る仕組みがあったり、先端の素材で焦げ付きを低減するようになっています。



脳外科手術,良性脳腫瘍,髄膜腫,聴神経腫瘍
愛用している村中医療器のバイポーラ鑷子

また、電流を出力する装置(ジェネレーター)側も、流れる電流の流れ方(パターン)を調整することで 焦げ付きにくくなるようです。


この電流パターン、確かにカタログなどを見ると(なるほど)と思ったり、学会などで実機を使ってみると (確かに、(もしかしたら?) 焦げ付きにくいかな)という印象を持ったりします。


しかし、実際のところは、やはり慣れの要素が大きくて、使い慣れた機械の方が実際には安全な気がしています。


つまり どれぐらいの電流を流してどれぐらいの長さ通電すれば、どのような形で組織が焦げ付くか、止血されるかという"感覚"で手術してる部分がかなり大きいです。


脳動脈瘤では、原則、硬膜内では出血させない手術なので、そういう繊細なバイポーラ操作が必要なことはあまりありませんが、脳腫瘍や脳動静脈奇形では死活的に重要になります。


*************


バイポーラ凝固で思い出されるのは、もう15年以上前になりますが、テレビで神の手と呼ばれていた F 先生の手術を見学に伺った時の話です。


髄膜腫の手術でしたが、かなり高出力で 本当に短い時間、通電することによって、まさに絶妙な 止血を得られているのを見て これが 達人のバイポーラの使い方 なんだと実感しました。

つまり(止血に必要なエネルギー)=f((出力) , t)


それをなるだけ真似できるように、自分の手術で安全なところで練習したりして、それなりにできるようになったと思っていますが、その過程でいろいろ自分でもバイポーラ鑷子を購入したりした結果、「バイポーラ装置本体よりも 組織に接触する バイポーラの先端の素材などの方が重要」というのが今の自分の結論です。


 結果として定価 ~500万円近い製品を、病院に買ってもらうところまでは。なかなかいかないなと思いました。


デモ器お借りしている○○社 の○○さん、スミマセン。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)


追記: 上記F先生については、失礼ではありますが、晩節を汚さず引退される方がよいと思っています。

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