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05-12-2018

三叉神経痛に関しては、MRIで責任血管、あるいは脳腫瘍などの原因が明らかで、全身麻酔が可能な程度に健康であれば、外科的治療(手術)が最善の治療だと考えています

ただし、三叉神経痛や顔面痙攣は、実際にはそれほど頻繁に出会う病気ではなく、脳外科でも数例しか経験がない、とか1回も手術したことがないという人もいます。

三叉神経痛の手術にもいくつかtipsと原則があり、この原則を外すと痛みが再発したり、治らなかったりということが起こります。

今回の教科書は、脳外科手術における再手術を特集したものです。

三叉神経痛の初回手術は、この部分のアプローチに慣れていれば、一般的にそれほど難しいものではありませんが、再手術になると感覚的には10倍以上難しいものになります。

​三叉神経痛・顔面痙攣については神経ブロックなどの代替手段があるため、再手術の効果が十分期待でき、安全に手術できる自信がなければ、他の治療法を考える方がよいと考えます。

 

​(結果的に「慣れてない医者は手を出すな」と上から目線の内容になっていますが、テフロン線維の中に埋もれた動脈を切って脳梗塞を起こしたり、再手術したけど治らないということが十分起こりうる手術なので、抑制的に考える方がよいと思っています。)

脳神経外科_再手術, 三叉神経痛, 顔面痙攣

06-27-2018

​血栓溶解療法後、24時間以内の急性期の頭蓋外内バイパスは安全に行えた、というcase seriesを兼松龍先生がまとめてくれ、Acta Neurochirurugica誌に採用されました。

脳梗塞の急性期治療は、静脈から血栓を溶かす薬剤を投与する血栓溶解療法と、それに適応があればカテーテルて詰まった血栓を取り除く治療が標準になっています。

しかし、これらの治療は基本的に心臓から流れてきた血栓に対する治療であり、動脈硬化で慢性的にゆっくり時間をかけて詰まった病変には有効でないことがしばしばあります。

しかも、超急性期に、心臓から流れてきて詰まったのか、動脈硬化で詰まったのかを見分けられないことがあります。

血栓溶解療法に用いるrt-PAは、できた血栓を溶かす薬剤であることから、投与後は外科的な手術は禁忌になりますが、かといって、目の前の患者さんが悪くなっていくのを、指をくわえて見ている訳にもいかない、ということで、倫理委員会を通して、rt-PA後24時間以内で外科的な治療を行ったという報告です。

​もちろん上記のような、いろいろな条件が重なった場合にのみ考慮する稀な事案ではあります。

バイパス手術は、止血がきちんとできていないと無駄に難しくなり、成功率が下がると思われますが、きちんと止血すれば、rt-PA投与後6時間くらいで手術を開始する分には安全にできそうに思われます。

​*但し、5例のみの報告なので、rt-PA後の手術の安全性を担保するものではありません。

脳神経外科,バイパス手術

05-29-2018

World Neurosurgery誌の"Full Endoscopic Vascular Decompression in Trigeminal Neuralgia: Experience of 230 Patients." に対するletterが採用されました。

顕微鏡を使わずに、内視鏡だけで脳外科手術を行うという試みがあります。以前から、脳室内腫瘍の生検・切除や、高血圧性脳内出血のような出血点が限られている疾患、下垂体腫瘍など鼻から行う頭蓋底手術には、内視鏡が多用されています。

この論文は、230人に対して、内視鏡だけで三叉神経痛の治療を行いました、というものですが、自分としては、この適応に関してはかなり批判的です。

詳細は以前にblogに書いた通りなのですが、そもそもこの手術は2.5cm大の小開頭でできる手術であり、皮膚切開も含めてさらに小さくできるということではありません。(この論文でも開頭は3cm)

また動脈を扱う手術であり、手前に出血を逃がせる頭蓋底手術や、トラブルが起こればすぐに切開して開腹できるお腹(一般外科)の内視鏡手術とも違い、操作中に出血が起これば重大な後遺症に繋がることです。この論文ではもちろん、大きな合併症はなかったということですが、figureから分かるように、(内視鏡なのに)視軸に無理があり、顔面神経麻痺を起こしたケースもあったようです。

自分でも内視鏡を「補助的に」用いることで、顕微鏡では死角になる部分を観察でき、有用なのは分かっています。

しかし、三叉神経痛は"「内視鏡で行うから低侵襲」ではない"最たる疾患という意見です。

三叉神経痛, 内視鏡, 脳外科手術

​補助的内視鏡の所見

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