脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
未破裂脳動脈瘤について
「検査の結果、症状はありませんが、脳動脈瘤が見つかりました」
脳ドックや、頭痛や"めまい"があって念のためのMRIなどの検査を行うと、脳動脈瘤が見つかることがあります。
「くも膜下出血を起こしていない」動脈瘤ということで、"未破裂"脳動脈瘤と呼ばれます。
(「破裂」という名称が、過剰に不安を煽っているという意見もあります。)
未破裂脳動脈瘤があるだけでは、ふつうは問題になりませんが、くも膜下出血を起こすと生命に関わる問題になります。
そのため、まずくも膜下出血に関して知る必要があります。
くも膜下出血について
くも膜下出血は、日本では概ね人口10万人あたり、20人から50人くらいに起こる比較的まれな脳卒中です。
そして、治療技術が発達した現在でも怖い病気のひとつで、発症した方のうち3人に1人は3ヶ月以内に亡くなります。
実際にその場で死んでしまう場合もあれば、病院に運ばれて手術などの治療を行ったにも関わらず、助からないということもあります。
そして、残りの方のうち、半分の方は元の生活に戻ることができるとされていますが、残りの方は麻痺や言語障害、あるいは寝たきり状態になってしまいます。
しかも大半の脳梗塞と異なり、40代後半から50代の壮年期に多く発症するという点で、社会的にもインパクトの大きい病気です。
くも膜下出血がいったん起こると、病院に着いて診断された時点で「どのくらい重症のくも膜下出血か」によって、予後、つまり元の生活に戻れるかどうかが、ほぼ決まってしまいます。
そのため、「くも膜下出血を起こす前に、その原因を治療したい」ということになります。くも膜下出血の9割は、脳の動脈にできた瘤(脳動脈瘤)が出血を起こすことによっておこるため、この動脈瘤を、"出血する前に" 治療しようということです。
未破裂脳動脈瘤
わが国では「もともとくも膜下出血の予防のために始められた脳ドックが広く行われていること」、「CTやMRIの普及率が高いため、頭痛やめまいの精密検査のために、これらの検査が行われる機会が多いこと」から、症状を出していない脳動脈瘤がしばしば見つかります。
この未破裂脳動脈瘤自体は、比較的よく見られる病気で、50歳以上の方を調べると、2~6%の方が動脈瘤を持っているといわれます。つまり、100人検査を行うと、2~6人くらいの方に動脈瘤が見つかります。
つまり未破裂脳動脈瘤自体は比較的ありふれた病気です。
(病気と呼ぶべきなのか?という議論もあります。)
100人に2~6人くらいが動脈瘤を持っているわりに、くも膜下出血を起こす方は10万人に20~50人つまり、10,000人に2~5人と少ないのです。
なので、未破裂脳動脈瘤をお持ちの方が、全員 くも膜下出血を起こすわけではありません。
そこで、
”どのような動脈瘤がくも膜下出血を起こしやすいのか?”。
(=治療する方がよいのか)
ということが問題になります。