脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
頭蓋外-頭蓋内バイパス手術
浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術
脳のバイパス手術の多くは、脳梗塞の予防のために行います。
脳梗塞は、脳を栄養する動脈が詰まったり、細くなったりして起こります。脳梗塞の治療(=これ以上 脳梗塞を起こさないようにする)としては、抗血小板薬という、いわゆる血液をさらさらにする薬や、コレステロールや中性脂肪を下げる薬を内服していただくことになります。
脳梗塞の原因によって、一番よいとされる薬は異なりますが、脳梗塞の原因となった動脈を調べた結果、頚動脈などの太い動脈が詰まっていたり、詰まりかけていることがありますが、このような場合に、薬の治療に加えて脳のバイパス手術を行うことが有効なことがあります。
【治療例】
57歳男性 右手の違和感があり、その後も右足を引きずる、字が上手くかけなくなってきたということで外来を受診。脳梗塞の診断で緊急入院し、抗血小板約などの点滴治療を開始したが、症状が悪くなったり改善したりを繰り返し、入院2日目のMRIで脳梗塞が悪化しているため、緊急手術を行った。術後は2週間程度リハビリを行い自宅退院された。
MRI画像(左:入院時。右: 翌日) 新しい脳梗塞が白くうつる
入院時のMRI(血管を見る条件で撮影。左側の(内)頚動脈が写っていない
(= 詰まっている)
手術後の脳血管撮影検査。もともと皮膚に栄養を送っていた浅側頭動脈(赤▲)から、脳の血管である中大脳動脈(緑▲)が映し出されている。
この方の場合は、
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脳梗塞の範囲が「血流不足」によって起こる部分にできていたこと、
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症状が脳梗塞の大きさの割に強かったこと、
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点滴などの内科的な治療を十分行っているにも関わらず、脳梗塞が拡大していること
以上から、手術による治療が望ましいと考えられました。
本ページの内容は前職(NTT東日本関東病院)在職中、ホームページ上での情報提供のために作成した内容を、一部改変、加筆したものです。