top of page

髄膜腫

髄膜腫は、良性脳腫瘍の中でもっとも頻度が高く、脳ドックなどでもよく見つかります。

昔は、脳を包んでいる膜のことを髄膜と呼んでいましたが、この膜から生えてくる腫瘍です。

脳の外から育ってくるので、脳の組織とは基本的に別物です。

だんだん大きくなってきて、言語や手足の動きをつかさどる部分を圧迫するようになると、言語の問題や手が動かしづらいなどの症状で見つかることがあります​

また脳の圧迫などのために、けいれん発作(症候性てんかん)を起こし、その原因を調べる過程で見つかることもあります。

治療の方法

硬膜は、頭から背骨の中まで骨の内側を覆っていますが、髄膜腫はこの硬膜のどこにでもできます。(頻度はさまざま)

そのため、髄膜腫ができている場所に応じて、皮膚切開・アクセス経路、体位を考える必要がありますが、ほとんどの部位では、この経路は確立されています。(術者の好みはあります)

髄膜腫の手術では、古典的に4Dということが言われます。つまりDetach (切り離す)、Devascularize (栄養を送っている動脈から切り離す)、Debulk (中身をくりぬいて体積を減らす)、& Dissect (周囲組織から剥がす)という方法論です。​

これらの操作がやりやすいように、アクセスを考えます。

腫瘍の回りの脳が傷んで、MRIで腫瘍の周囲が腫れているような場合には、4番目のDissect(剥がす)で、きれいに剥がせる面が無くなっていることがあり、機能を残せるかどうかが微妙になります。

そのため、手術の難しさという点からは浮腫が起こる前か、あるいは範囲が狭いうちに治療するのが良いと考えます。

血管や神経を巻き込んでいて、剥がせない場合には(良性腫瘍なので)残すことがあります。​

この残った部分は外来で経過を見ることになり、大きくなってくる場合には、サイバーナイフなどの放射線治療を行うことがあります。

代表的な症例

40代の女性。

うつ病の診断で精神科に紹介されたが​、症状が合わないためCTを撮影され、発見された方。

​かなり大型の髄膜腫。

髄膜腫,良性脳腫瘍
髄膜腫,良性脳腫瘍

術後。

​脳の圧迫がなくなり、「うつ」と考えられていた症状(活気がない)は消失。

髄膜腫,良性脳腫瘍

30代 女性

三叉神経痛により紹介。MRIで腫瘍による三叉神経の圧迫が確認された。

薬で痛みがコントロールできず、手術に。

三叉神経に沿って腫瘍が前方に伸びていた(赤▲)ため、側方と後方(2箇所)からのアプローチで手術を行った。

髄膜腫,三叉神経痛,手術
髄膜腫,三叉神経痛,手術

手術後 腫瘍は消失。三叉神経痛は無くなった(鼻翼に感覚低下によるしびれが残存)。12日後退院。

髄膜腫,三叉神経痛,手術

70代(後半)女性

足のしびれ、違和感の精密検査で見つかった胸椎髄膜腫の方。

​「高齢だし、歩けているからそのまま経過を見ましょう」と前医では言われていたが、実際には、歩くにはほぼ問題ないものの、座った状態から立つのに支えがないと苦労する状態のため、手術をお勧めした。

spinal meningioma,髄膜腫
spinal meningioma,髄膜腫
spinal meningioma, 髄膜腫
spinal meningioma, 髄膜腫

術後、動きはやや機敏になり、「ヒールのある靴が履ける」ようになった。

​(深部覚(位置覚など)に、実際には影響が出ていたということ)

髄膜腫, 頭蓋底腫瘍, 視神経
髄膜腫, 頭蓋底腫瘍, 視神経, 視力
髄膜腫, 頭蓋底腫瘍, 視神経, 視力
髄膜腫, 頭蓋底腫瘍, 視神経, 視力

20代女性  妊娠中、左眼の見えづらさで発見

​前床突起という視神経の近くから生えてくるタイプの髄膜腫

​胎児の成長を見つつ、手術時期を検討する方針としたが、3ヶ月で著しく増大。

胎児もある程度大きくなっていたので、

​帝王切開後、開頭手術を行った。

手術前、左眼は明るい/暗いしか分からなかったが、改善し、2週間後退院。

術後5ヶ月のMRI

*1 画像・エピソードの掲載については実際の患者さんの承諾をいただいております。

 

*2 病態は患者さん一人ひとりで異なるため、治療結果を確約できるものではありません。

bottom of page