脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
2019-03-17
前職で調べた未破裂脳動脈瘤の出血率に関する論文が、 アメリカ神経外科学会誌(Journal of Neurosurgery)に 掲載されました。
未破裂脳動脈瘤の出血率に関しては、UCAS Japanなど多施設前向き研究や、単施設でももっと多くの患者さんを対象にした研究が既にあります。「今更何か新しいことがあるのか?」というところですが、"従来行われてきた方法で解析を行うと、実は出血のリスクを小さく見積もってしまうのではないか?"という内容です。
実際にはUCAS Japanや、98年のISUIAでもあったはずですが、「くも膜下出血のリスクの高い動脈瘤は治療されてしまうのに、出てきた出血率に意味あるの?」という、(倫理的に)避けられない問題があります。
以前のどの研究も「生存曲線を作って、Cox比例ハザード分析を用いて"出血に寄与した因子は○○なので、これが出血の危険因子だから注意!"」というものですが、実際には多くの(出血リスクが高い)動脈瘤が治療されており、出血の件数/観察した期間で出てくる値は、いわゆる自然歴とは異なるということです。(ブログに書きました)
我々の研究でも自然歴を求めることはできませんが、「治療と出血の件数を並べて図示して提示するとことで、患者さんの治療に関する意思決定に貢献できる(はず)」という内容です。
01-03-2019
脳動脈瘤や髄膜腫などの手術で用いる前床突起切除に関して、CTの所見に基づき、視神経を傷めないように視神経管の緻密骨を早期に確認するという方法の論文(technical note)が、World Neurosurgery誌に採用されました。
実際には2011年ころに、脳外科学会や近隣の脳外科の会で発表していた内容で、忙しさにかまけて、お蔵入りしていたものです。
特に前床突起近傍の動脈瘤に関してはその当時からコイル塞栓術が多く行われるようになっていましたが、その理由が「骨を削るのがリスクが高く、クリッピングが難しいから」という理由であれば、それは「違うんじゃない?」ということで、解剖の勉強不足か、経験不足によるものだと思います。
30-01-2019
半球間裂アプローチ部分を担当した「脳神経外科手術のための解剖学」が上梓されました。
専門医前頃に実践的な解剖を学ぶのにとても重宝した教科書であり、その改訂に参加するというのは、他の本とはまた違った感慨があります。
また半球間裂アプローチは前の版では、堤一生師匠が(ゴーストライターとしてですが)執筆されていた部分でもあり、そういうところも少し嬉しいところです。
ただ10年前と比べると、いろいろな教科書が出ていて、自分のスタイル、読みやすさ、(イラストの好み)なども関わってくるので、どれくらい需要があるのかというのは気になるところです。