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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

「腎臓が寿命を決める」

更新日:2023年8月9日

書店で平積みになっていた健康本



著者は自治医大で研究されている先生だが、本筋とは違うけれど、「研究って、こういう偶然の出会いがある人がいるんだよなあ」と思うようなきっかけでClotho(クロトー)という遺伝子(と、それがコードする蛋白)に出会い、腎臓の研究にのめり込んでいったということです。


そして、このクロトーという蛋白によって、血液中のリンの濃度が厳密にコントロールされていますが、血液中のリンの量が多くなると、腎臓に負担がかかり、少しずつ腎臓のはたらきが落ちていきます。


リンとカルシウムのペアは、生体内でいつでも過飽和、つまり、いつどこで結晶化してもおかしくないような濃度になっています。


いつでも骨の作り替え工事が始められるようになっているということです。


リン酸カルシウムは骨の中に蓄えられている分には、全く問題ありません。しかし、骨以外のところでリン酸カルシウムが析出すると、厄介なことになります。

特に血管(動脈)

つまり、本来、弾力に富んだ組織である動脈が硬くなってしまいます。

動脈硬化になるということですね。


実際に脳の動脈硬化した血管でも、外から見ても石灰化していて骨みたいになっているのが分かることがしばしばあります。


また人工透析を長期に行っている患者さん、つまり自分の腎臓がはたらかなくなっている方では、脳の動脈だけでなく、皮膚の血管までカルシウムが沈着していることも多いです。


タンパク質とリン酸カルシウムが結合して、コロイド粒子(CPP)として血液の中を移動していて、これが沈着するということですが、人工透析の方はともかく、そうではない40代の方で脳の動脈が石灰化していることもあります。


そのような場合、食事などでリンを摂りすぎている可能性があります。


*************



「高リン血症と診断される前の段階から、食事に気をつけてリンの接種量を減らす。必要なら「リンを減らす薬」を予防的に飲んでいく方がよい。」


(このような薬が実際にありますが、現時点では予防的投与は保険適応外。余談ですが、次に触れるFGF23という蛋白が過剰に作られてリンが少なくなりすぎると、くる病・骨軟化症という病気になり、病的な骨折を起こすことがあります。)


血液中のリンの濃度が高くなると、FGF23という蛋白が腎臓の尿細管に作用することで、リンを再吸収させずに尿に出させます。

そうすることで、血液中のリンの濃度は下がるのですが、その代わりに尿のリン濃度が高くなり、この尿のせいで尿細管が傷むことになります。


結局、血液のリン濃度を上げないようにすることが大事なのですが、そのためにできることがいくつかあります。


◎身体の中に入れるリンの量を減らすこと。


リンは食べ物の中に含まれていますが、野菜に含まれている有機リンは比較的吸収されにくい一方、肉・乳製品の有機リン、食品添加物などとして使われる無機リンは吸収されやすいようです。

そのため、添加物や合成保存料が含まれている食べ物、肉・乳製品、ラーメン、ファーストフード、スナック菓子などは控える方がよいと述べられています。


(もちろん程度問題なので、絶対ダメということではありませんが、50歳を超えたら気付かなくても腎臓の機能は落ちてきているので、食べ物に気をつけよう、ということです。養生ですね)


◎もう一つは運動です。


われわれの骨は常に補強されながら作り替えられています。


宇宙飛行士が宇宙に滞在している間、かなりの長時間運動していないと骨粗鬆症になってしまうことが知られていますが、地上でも運動しないと、骨粗鬆症が進みます。


骨はリン酸カルシウムの貯蔵庫なので、そこに蓄えられているリンが外に出ないようにすることが大事です。


結局、腎臓の健康を保つためには、「食事と運動」という結論になるわけで、お手軽な方法はないということです。

言い方を変えれば、「食事と運動」は腎臓の健康という側面から考えても健康寿命にとって大事ということもできます。


健康のために生きてるわけではありませんが、腎臓のダメージが積み重なって人工透析になると、非常にQOLが下がってしまいます。


腎臓も再生しない臓器なので、大切に使いたいですね。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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