豪州脳外科・神経内科学会誌(Journal of Clinical Neuroscience)に掲載された中国の論文
J Clin Neurosci. 2020 Nov;81:252-258. doi: 10.1016/j.jocn.2020.09.060.
Shuai Zhang , Yaoyao Shen , Chenguang Zhou , Weisheng Zhu , Fuqiang Zhang , Jie Hu , Dong Liu , Ming Lv
2015年から2017年の間に、中国Tiantan病院の血管内治療科に入院した、脳動脈瘤患者さんの情報を後方視的に調べた。
その結果、201人のくも膜下出血の患者さん(動脈瘤の個数でいうと290個)と、482人の未破裂脳動脈瘤の患者さん(動脈瘤は679個)が登録されていた。
これらの患者さんについて、これまでくも膜下出血の危険因子とされている、動脈瘤の大きさ、場所、喫煙習慣などとともに、睡眠時間についても調べた。
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この睡眠時間を調べる方法というのは、実際に行うとなると難しいのだが、この調査では”本人、もしくは家族”に、3ヶ月間の平均睡眠時間を尋ねている。
なので、「いつもどれくらい寝てますか?」と聞いたときの答え、みたいなものである。
「週末は長めに寝ています」といった情報は、おそらく加味されないし、睡眠時無呼吸症候群があるかどうかなども検討対象ではない。
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結果的には動脈瘤のサイズ(8mm以上)、不整形、脳動脈瘤の家族歴(くも膜下出血の家族歴ではない)とともに、睡眠時間が6時間未満の人は、8時間以上寝ている人と比べると、"統計学的に有意に"くも膜下出血の危険が高かった。
ただし、前にも述べたように、くも膜下出血の患者さんと、未破裂脳動脈瘤を持っている人を比べることにどういう意味があるのか?という疑問があるので、これはあくまで参考程度の話である。
この論文の良いところは、くも膜下出血の患者さんについて、大まかではあるが、くも膜下出血患者さんの睡眠時間の分布を載せてくれている。
これを見ると、くも膜下出血の患者さんの中では、睡眠時間が6時間未満の人の割合が、6−8時間の方と比べても多そうである。
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睡眠中は、成長ホルモンなどが出て、血管も含めて身体の傷んだ部分が修復されると考えられている。なので、睡眠時間が短くなれば、その修復が間に合わず、微小な傷が日々積み重なってしまう可能性がある。
5mm未満の小さい未破裂脳動脈瘤はたくさん見つかるのに、5mmを超えるような方はその中の1/20くらいであることを考えると、いったんできた動脈瘤のデフォルトも"修復"だと思っているが、短時間睡眠はこの修復を妨げるのかもしれない。
アルツハイマー病に関わるアミロイド蛋白も、睡眠中に髄液を介して掃除されるようなので、脳の健康のためには、6時間程度は寝る方がよいだろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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