Peingで、「うちの病院は、手術件数は多いけど下手と揶揄されています。(後略)上手くなるにはどうすればいいでしょうか?」という質問をいただいた。
手術件数が多い=手術を受けている患者さんの数が多いということであり、実際に下手な手術が行われているなら、残念なことだ。
しかし、手術件数が多いということは、それなりに患者さんが集まってくるということでもあり、字面(じづら)ほどは深刻なことでもなく、こういう病院の方が意外に地元の評判はいいのかもしれない。
脳外科の手術なので、未破裂脳動脈瘤や、ドックで見つかったような症状のない良性脳腫瘍なのに麻痺などの後遺症が"続いて"起こる、というのはわかりやすく下手と言えるが、そのような病院は稀だろう(と思いたい)。
そういう明らかに下手というのは口コミでも伝わるが、そうでなければ「手術が下手」というのを、とくに一般の患者さんが知るのは難しいし、実際にはあまり意味がないのかもしれない。
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たとえば、標準的には3,4時間で終わる手術が7,8時間かかる病院があるとする
(実際ある)。
患者さんは、手術時間の“相場”(この場合は3時間程度)を知らないことが普通なので、手術前に「7時間、もしかしたら8時間程度かかるかもしれません」という説明を受ければ、「そういうものか」と思うだろう。
そして実際に8時間かかり、疲労感の中にも達成感を漂わせた外科医に
「思ったより大変でしたが、予定通りに終わりました」
と言われれば、ほとんどの患者さん・ご家族は
「長い時間、ありがとうございました!!」
と、いっそう感謝されたりさえする。
つまり、単純に手術時間が長い方が感謝され具合(すなわち満足感)が大きいことがままある。
(言い訳であるが、思っていたより癒着が強かったとか、脳の萎縮が少なく、脳裂を分けるのに時間がかかる、ということは実際にあるので、上記のようなコメント=下手というわけではない。あしからず。)
反対に、3時間ぐらいを見込んでいて、2時間くらいで終わったりすると、ご家族などから
「もう終わったんですか?(実は簡単な手術だったのでは?/手を抜いたのでは?)」
という雰囲気を感じることさえある。
なので、後遺症が残るようなことが無ければ、少なくとも時間がかかるから「下手」とは言いきれず、患者さんの満足感が高ければそれほど悪いことではない、という見方もできるのだ。
それでもやはり限度はある。
以前、開業の先生から紹介いただいた患者さんで、
「別の病院で『難しい手術なので、8時間くらいかかります。もしかしたら10時間を超えるかもしれません』と言われたけど、海外で医者している親戚に聞いたら、3時間程度って言われました」
という方がいて、その担当医が知っているDr.だったので脱力したことがあった。
(この良性腫瘍の患者さんは実際、2時間ちょっとできれいに取れた)
実際にこのDr.の手術を見たことはないが、3時間で終わる手術が8時間かかるのは、何か大きな問題があると考えるべきだろう。
((2)に続く)
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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