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治療をお勧めする未破裂脳動脈瘤

今までに発表されている調査をまとめると、くも膜下出血の危険因子として、

  1. 動脈瘤が大きい (5mm以上)

  2. 動脈瘤による神経症状がある

  3. 特定の場所(動脈瘤の場所によって出血の危険性が異なる)

  4. 形がいびつ

  5. 血圧が高い

  6. 検査を繰り返しているうちに大きくなっている

  7. 本人がくも膜下出血を経験している

  8. 家族にくも膜下出血を起こした方がいる

  9. 年齢

  10. 喫煙

が挙げられています。

特に「1. 動脈瘤の大きさ」は、どの論文でも必ず1番目のリスク因子として挙げられており、大きさが大きいほど出血のリスクが高くなります。

未破裂脳動脈瘤, クリッピング術、前交通動脈瘤

出血前に見つかっていてくも膜下出血を起こした動脈瘤の1例。

​13mm大の前交通動脈瘤。

また、「2. 動脈瘤による症状がある」というのは、未破裂脳動脈瘤の経過を見た論文ではあまり出てきませんが、治療を強く勧める動脈瘤になります。

特に、動脈瘤のために、ものが二重に見えて、まぶたが下がってきている(動眼神経麻痺を起こしている)場合には、2週間以内に半数が出血を起こすとも言われ、(癌などで余命いくばくもないなど) よほどの理由がなければ緊急の治療をお勧めします

未破裂脳動脈瘤の出血率調査は、基本的に「無症候性」未破裂脳動脈瘤、つまり症状のない動脈瘤の話なので、症状のある動脈瘤は別扱いになります。

動脈瘤がすごく大きく、脳自体を圧迫して症状を出している場合には、くも膜下出血の危険もありますが、それ以上に、さらに大きくなることで、失明や麻痺によって寝たきりになるリスクが出てきます。

未破裂脳動脈瘤, クリッピング術, バイパス手術

70代女性、大型動脈瘤による視野狭窄

大型未破裂脳動脈瘤,クリッピング術,バイパス手術

手術所見

大型未破裂脳動脈瘤,クリッピング術,バイパス手術

バイパス(矢印)を併用したクリッピング術​

巨大動脈瘤, 血栓化動脈瘤, クリッピング術

40代男性、脳幹圧迫によるふらつきで発症した血栓化動脈瘤

巨大動脈瘤, 血栓化動脈瘤, クリッピング術

動脈瘤の減圧とクリッピング術を行い​、症状は消失

4. 形がいびつな動脈瘤、とくにブレブと呼ばれる突出部分があるものは、部分的に壁が薄くなっているものが多く、出血のリスクが高いです。

未破裂脳動脈瘤,手術

​ブレブと呼ばれる突出部分。

壁が薄いためひときわ赤くなっている。

9.年齢に関しては、高齢の方の方が出血が多いとされています。

Neurology. 2015 Nov 24;85(21):1879-85. 

Risk of rupture of unruptured cerebral aneurysms in elderly patients.

Hishikawa et al.

(但し、この調査でも、2~3年の観察期間で出血を起こしたのは3.6%(30人に一人)だけです。)

未破裂脳動脈瘤の治療は あくまで「将来の」出血を防ぐためのものなので、あまりご高齢の方にはお薦めしません。​

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