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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

3mm未満の脳動脈瘤からのくも膜下出血

更新日:2023年8月9日

くも膜下出血をたくさん治療している埼玉医大から出た論文。


Ikegami M, Kamide T, Ooigawa H, Take Y, Teranishi A, Suzuki K, Kohyama S, Kurita H. Clinical features of ruptured very small intracranial aneurysms (< 3 mm) in patients with subarachnoid hemorrhage.

World Neurosurg. 2022 May 28:S1878-8750(22)00748-3.



なんと埼玉医大国際医療センターで治療されたくも膜下出血の患者さん609人の中で「3 mm 未満の動脈瘤からの出血が全体の17%を占める」というもの。


くも膜下出血,脳動脈瘤,手術
3mm未満の極小のほか、5mm未満も多い。

これだけ見ると、5mm未満の動脈瘤から出血する人もかなり多いのですが、同じサイズの動脈瘤を持っている人を(かなり適当ですが)青で描くとこんな感じなので、あまり心配しないでください。


くも膜下出血、未破裂脳動脈瘤, 脳動脈瘤
実際に同じサイズの未破裂動脈瘤を持っている人を一緒に描くと

たくさんの未破裂動脈瘤(青)のほんの一部が出血するのですが、圧倒的に極小〜小型の方が多いので、くも膜下出血を起こした人の数だけグラフにすると上のようになります。


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確かに実際には3ミリ未満の未破裂動脈瘤を持っている方が結構います。


前にも紹介した脳ドックで見つかる動脈瘤の論文では4070人調べて動脈瘤持ってる人が176人見つかりましたが、脳卒中のガイドラインなどで手術を勧められるサイズ、つまり5ミリ以上の割合というのは11個だけでした。

そして見つかる動脈瘤の半分くらいは2.0-2.9mmの極小動脈瘤でした。


5ミリ未満の動脈瘤が出血する危険性は、2010年の国立病院機構からの論文では年間0.5%とされていましたが、今回の論文の中で引用されている過去の研究結果を見ると、1年あたり0.34%から0.80%とされています。つまり1年当たりで考えると動脈瘤を持っている人のせいぜい1000人に8人ぐらい程度。


なのに実際にくも膜下出血を起こして病院にくる人の、6人に1人は3ミリ未満というめちゃくちゃ小さい極小動脈瘤ということです。


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このブログを読んでくださってる方の中には、小さな未破裂動脈瘤が見つかって、「何か有用な情報があれば」、と読んでいただいている方もいらっしゃると思います。


そういう方々にとっては不安をあおる論文ではあります。


比較的、ポジティブな情報としては、3ミリ以上の動脈瘤と比べると3 mm 未満の極小動脈瘤ではくも膜下出血の重症度が低い傾向でした。

くも膜下出血の予後を決定する一番の要因は(手術の技術ではなく)病院に到着したときの重症度です。

極小動脈瘤ではmodified Rankin scaleという評価で0から2の方の割合が80%ぐらいで、一般のくも膜下出血よりも良かったという結果でした。

軽症で発症して神経学的な結果もよかったということのようです。


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やっぱり極小の未破裂動脈瘤でも治療(手術)を考える方がよいのでしょうか?


これも過去のブログで書いていますが、こういう極小動脈瘤や3 mm か4 mm の小型動脈瘤からのくも膜下出血は、できてから比較的すぐに出血するんじゃないかと言われています。

そして出血しなかった動脈瘤は、身体の自然なはたらきで壁の修復が進んで、出血しにくい、安定した動脈瘤になり、また何か血圧や、血液中の虫歯菌などの影響で動脈瘤の壁が傷んで、出血を起こすか、また修復される。


つまり見つかった時点でいつからあるのか分からない動脈瘤は、壁の修復が進んで安定した動脈瘤の可能性が高いと考えられます。


できたての壁の薄い修復されてない、リスクの高い動脈瘤だけを選んで治療できるならそれに越したことはありませんが、今のところ、そういうことはできません。


そのため、例えば0.5%の出血率だったら200件手術して、ようやく一人のくも膜下出血が防げるという計算になります。

もちろんその一人の患者さんにとっては「良かったですね」ですが、その1人が、あなたである可能性は単純に1/200です。

そしてその他の199人にとっては、開頭手術だったら「切られ損」だし、血管内手術手術だったら「詰められ損」とは言いませんが、200件 手術すると1件くらいは脳梗塞や、穿刺部の仮性動脈瘤を起こすんじゃないでしょうか。



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地理的なことを考えると、埼玉医大国際医療センターは、結構埼玉の奥まったところにあり、その辺りのくも膜下出血をほぼ一手に引き受けてる病院です。


もしかすると、通勤時間が長いとか、そのせいで睡眠時間が短いとか、喫煙率がまだ都心と比べて高いのかもしれません。


小さい動脈瘤については、一般的な生活習慣の改善が第一。

住んでいるところを変えるのは難しいと思うので、なんとか睡眠時間を確保するとか、血圧のコントロールをするといったことが大切です。


治療をお勧めする未破裂動脈瘤についてはこちら


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)


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