(続き)
J Neurosurg. 2019 Aug 16:1-7. doi: 10.3171/2019.5.JNS183651. [Epub ahead of print]
これまでの一般論としては、くも膜下出血を起こした動脈瘤(破裂脳動脈瘤)の方が、未破裂脳動脈瘤より再開通しやすいとされている。
この研究では全体56/339 (17%) がくも膜下出血で、残りは未破裂脳動脈瘤だ。
しかも最大径が5mm以下のものが、212個(全体の63%)。
くも膜下出血が全例5mm以下というわけでもないだろうから、「5mm以下の小型の未破裂動脈瘤」がかなりの割合を占めていると言える。
このブログでも何度か書いているが、「5mm”未満”の未破裂脳動脈瘤はほとんど出血しない(~0.5%/年)」ので、この小型動脈瘤をあえて(ソウル大学病院が)治療しているというところがまず驚きである。
5mm未満と5mm以下の違いに留意する必要はあるが、この出血リスクの小さい未破裂脳動脈瘤にコイルを詰めても、それほど再開通は起こさないであろう。
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再開通を起こした動脈瘤は5個だけなので、「たまたまそうなった」だけかもしれないが、
4個は5mm以下の小型動脈瘤
4個は、以前からコイル塞栓術の良い適応と言われてきた「side wall」型 (=血管の分かれ目ではなく、側面に”いぼ”のように飛び出たタイプ。)
と、従来、血管内治療医たちが、再開通リスクが低いと言ってきた動脈瘤に起こっている。
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同グループからの別の論文で、治療を行った動脈瘤の37%が(後交通動脈瘤をのぞく)内頚動脈瘤としている。
内頚動脈瘤はいくつかの場所を合わせた呼称だが、おそらく一般的な頻度から考えると、大半は前床突起部(paraclinoid)と考えられる。
内頸動脈瘤のなかで、このparaclinoid動脈瘤は、(上向き以外は) ほとんど出血を起こさない(が、血管内手術がたくさん行われている)動脈瘤だが、これもコイルを詰めたところで、再開通はほとんど起こさないだろう。
つまり、「小型・未破裂・paraclinoidがたくさん含まれる動脈瘤の経過を見ても、再開通を起こさないのは当たり前なのではないか」と思ってしまう。
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もちろん、この研究は後方視的研究なので、上記のような、いろいろなバイアスが入ってしまうのは仕方ないことだ。
著者や、commentaryも、前向き研究が必要と述べている。
ただ前向き研究を行う際も、せめて、破裂/未破裂、5mmでも7mmでもいいけどサイズによる層別化して解析できる症例数を目指すべきだし、都合のいいバイアスを減らすためparaclinoidを解析に含めるべきではないだろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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