ストレスがくも膜下出血の引き金になるかどうかについては、確かに「なりそう」ではあるが、証明するのは難しい。
生きていれば何らかのストレスはあるわけであり、また、それほどストレスがあるとは思えない(?)方でも、くも膜下出血は起こることがある。
Medicine (Baltimore). 2021 Jun 4;100(22):e26193.
Kim YS, Joo SP, Song DJ, Lee TK, Kim TS.
この論文では、未破裂脳動脈瘤の患者さんと、実際にくも膜下出血を起こして手術になった患者さんから、髪の毛を3cm 切り取り、そこに含まれるコルチゾルを測定することで、くも膜下出血にストレスが関与しているかを調べた。
彼らの研究の結果では、男女差を覗いても、あるいは大きさなどの他の危険因子の影響を考慮しても、くも膜下出血を起こした患者さんの方が、コルチゾル値が統計学的に有意に高かった。
つまり、出血する3ヶ月前くらいからのストレスが、出血に関与した可能性があるという結果だった。
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興味深い研究・結果であり、慢性的に強いストレスを受けることは避ける方が良さそうではある。
しかし、くも膜下出血の患者さんと、いつから未破裂脳動脈瘤を持っているか分からない患者さんのデータを比べるのが適切なのだろうか?
つまり、くも膜下出血の患者さんについては、発症前数ヶ月、あるいは数週間の、本人の環境・コンディションが影響している可能性はあるだろう。
一方、未破裂脳動脈瘤の方から得られる値は何を表しているのだろう?
もちろん3ヶ月くらいのストレスレベルを表している。
しかし、未破裂脳動脈瘤に関しては、もしかすると、ずっと前にできたけど、ストレスが減ったことで修復が進み、落ち着いてしまったものかもしれない。
あるいは、たまたま出血”間際の”未破裂脳動脈瘤だけ集めてくることができれば、高いコルチゾル値が得られる可能性もあるかもしれない。(それができれば苦労しないのだが)
そして、割合としては前者が遙かに多いはずなのだが、一応比較対象としては妥当なように思える。
(一般の動脈瘤が無い人でも良い気はする)
あるいは5mm以上で「大きめなのに出血せずに済んでいる人」と比べる方が良い可能性もある。
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しかし、くも膜下出血を起こしたグループの方が明らかに(出血前数ヶ月の)コルチゾル値が高いというのは興味深い。
繰り返しになるが、強いストレスを長期間受け続けるというのは避ける方がよさそうだ。
ストレスの無い生活は考えにくく、適度なストレスは寧ろ耐性を高める部分もあると思うが、休養を挟まないといのちを縮めてしまうかもしれない。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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