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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

Art of local anesthesia

慢性硬膜下血腫などの手術や、中心静脈の確保、腰椎穿刺など、局所麻酔を行うことは多い。

また全身麻酔の手術でも、epinephrine入りの局所麻酔薬を用いることで(こちらはepinephrineの方が主役だが)、皮膚からの出血を抑えることができる。


当然ながら、局所麻酔一つとっても、こだわって行うべきだ。


局所麻酔,脳外科手術,低侵襲手術
局所麻酔から自ら行うJuha教授(@Helsinki, 2010)

まず時間。

麻酔が効いてくるには注射してしばらく時間が必要なことは、中高生でも知っている(?)。

なので、麻酔薬を注射してから、実際に”痛いこと”を始めるまでに、麻酔薬が作用するのに十分な時間をおかなければならない。


このとき、麻酔薬の注射をして、効くまでぼうっと待っているのではなく、施術開始までの時間を頭のなかで組み立てて、(麻酔の注射)→(細々とした準備、セッティング)→ (痛いこと)という用に、”ただ待つ”という時間を短くするように考えるべきだ。


また大きめの病院では、手術開始の際にタイムアウトを行うと思うが、局所麻酔もタイムアウトの後に行うことになっている施設もある。

しかし、これでは局所麻酔(とepinephrine)の効果を十分活かせない


面倒かもしれないが、たとえば覆布をかける前に局所麻酔をすることにして、タイムアウトをすればよい。そして執刀前にもう1回すれば良いのではないだろうか。

(チェックポイントを増やす分には医療安全面から色々言われることはないし、それで出血量が抑えられるなら麻酔科も反対しないだろう)


この点に関しては、脳外科手術で最も間違えてはならないのは、患者さん取り違えと左右間違いなので、消毒して布で覆う前に確認作業を行う方が理にかなっている


時間に関して、もっと細かいところでは、麻酔薬を注射する速度にもこだわるべきだ。

何年か前の雑誌「レジデントノート」の縫合に関する記事で、「局所麻酔は1mlあたり10秒かけて注射する」という記事が出ていた。

つまり針が進んでいく部分の麻酔も考慮して、ゆっくり注射するということである。

(手が震える人は、ゆっくりになると余計震える場合があるので、震え対策を別途考えること)


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開頭手術の皮膚切開部分を麻酔する際、全長に効かせるべく、何カ所も刺して麻酔するドクターがいるが、刺した部分から血液が滲んでくると、見苦しいし、ドレープが剥がれて毛が露出する原因にもなる。

なので、カテラン針など長い針を用いて、刺す箇所を少なくする方がよいと思う。

2,3箇所なら、血液が滲んできても、指で圧迫止血しやすい


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2006年に、(最初はやや不本意ながら)ガンマナイフも経験させていただいたが、ガンマナイフのフレームを頭に付ける際にも局所麻酔を行う。


複数回ガンマナイフ治療を受けられた患者さんに、「今回の助手は麻酔が上手だった」と言っていただけ嬉しかったが、局所麻酔にこだわることは、患者さんの治療の満足度に「分かりやすく」直結するのでやらなきゃ損だ。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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