また脳血管バイパスのtips。
M4レベルの側枝を切断しても、MRIで分かるような梗塞が出現することは稀と思われるが、少し太い枝になると躊躇するだろう。
症状として何も出なくても、術後MRIの拡散強調画像で高信号が検出されるとがっくりくる。
完全にY字になっている部分であれば、3本ともクリップで遮断しようと考えるが、「切っても大丈夫」と思えるようなサイズの枝であれば、迷うところだ。
そこで、ここ6年くらいは、「原則、側枝は切らない」という方針でrecipientの準備を行っている。
吻合部位の設定も関わってくるが、基本的には、側枝周囲のarachnoid trabeculaを処理し、ある程度伸びるようにすれば、側枝も一緒に遮断クリップで噛むことで、切らずに済む場合が多い。

このとき、側枝がクリップブレードとrecipientの血管壁の間に挟まれるように気をつけないと、動脈切開後にback flowに悩まされることになる。
back flowが来るのは、側枝がrecipientに対して裏側気味に位置していて、内腔がつぶれていないためなので、クリップをかけ直すか、ゼルフォームを裏に追加して、側枝を圧排させるだけでも、血流を遮断することができることがある。
また、前に書いた内容と重なるが、遮断クリップの先端が少し、ラバーシートの裏側に入るようにかけることで、ブレードの奥行き(深さ)が足りなくて遮断できないということが減る。
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側枝を残した場合、遮断を解除するときに再度注意が必要だ。
つまり、遮断時間を少しでも短くしようと、あまり考えずにクリップを外すと、この温存した側枝は壁も薄くて脆弱なので、せっかく温存したのに結局切れた、ということになりかねない。
ラバーシートを取り除き、(必要なら)度台にしているコラーゲンスポンジを取り除くまで愛護的に行うのがコツだ。
これでほとんどの場合、側枝を(少なくとも形態学的に)温存することができ、通常、MRIでも梗塞はできない。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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