Peingであった質問

現在のような研修制度でなかったため、僕は医学部を卒業してすぐに脳外科の研修に入っており、一般外科や心臓外科などの経験はない。
なので、比較というのは難しいのだが、印象を書いておく。
1. 体力的にハードか?
脳外科といえば長時間手術(!?)で、脳外科をもつ病院の最長手術時間記録は脳外科の脳動静脈奇形(AVM)、というところも多いと聞く。
しかし、特に非出血例AVMの手術が少なくなったことと、AVMでも血管内であらかじめ塞栓してもらうことによって長い手術は大分少なくなった。
脳腫瘍(頭蓋底腫瘍)などでも、はじめから長時間かかるのが予想されるものは、開頭・骨削除と腫瘍摘出を別の日に行うようになっており、やはりそれほど長くはならないことが多い(ただし病院による)。
また同じ手術なら、自分の技量が上がることで、早く終わるようになるが、技量がないうちは、その範囲で必死に足掻くことになるので、時間が経つのはあまり気にならない。
(むしろ指導医の方が疲れる)
手術自体は、特に顕微鏡手術は座って行うことが多いので、最初に変な癖がつかなければ、それほど疲れないという印象。
夜間の呼び出し・手術: これは外科系はどこでも同じ。
強いて言えば人手の少ないところでは、呼び出しが増える。
自分も3日に1回(一時期2日に1回)当直+そうでない日の夜間手術は助手に、という環境にいましたが、自分ができることが増える成長曲線の急峻部分では、あまり苦にはならなかった。
ただ、このような働き方が長続きするはずはなく、これに関しては現在の医師の働き方改革、脳外科でいえばセンター化に期待したいところだ。
体力的には昔ほどハードではないのでは?という印象だ。
(CTが無かった時代の脳外科医のハードさを考えると雲泥の差)
2. 精神的にはハード
ハードだと思うのは、自分の手術で患者さんが悪くなったときだろう。
手術の成否は基本的に術者個人の技能に依存する、というところが脳外科の魅力的なところだと思っていて、大半の手術は独りでもできるようになる。
(心臓外科はこの点で似ているかもしれないが、独りでできることは少ない?)
上手くいけば「ドヤ!」っとなる訳だが、手術が上手くいかず、後遺症が残るような事態になれば、やはり術者の責任。
しかも、だんだん上手くいくのが当たり前になってきて、そういう患者さんは外来にも来なくてよいので、どんどん記憶から消えていく。
一方で、上手くいかなかった人しか記憶に残らない、というところがキツいかもしれない。
ちなみにメディアで神の手と持ち上げられている脳外科医もいるが、彼らもそうとう痛い目に遭っている。
しかも、痛い目のことをすっかり忘れていたりするので、特殊能力かもしれない。
あと、多くの一般病院では、脳卒中の手術が主体となるが、くも膜下出血以外は、いくら頑張っても結果は意識障害、気管切開、胃瘻あるいは植物状態ということもしばしばある。
「この治療に意味はあるのか?」という疑問が常にあり、これもハードかもしれない。
(不謹慎だが、手術自体は面白い)
3.経済的にハードということは現時点ではないが、米国の脳外科医(専門医)の平均年収が50万$というのを考えると、割に合わないのかもしれない。
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最初の質問に答えるとすれば、別に脳外科に入ったからといって、一生やらなければならない訳ではない。
数年して形成外科・眼科やリハビリ科、救急科、医療系ベンチャーなどに転向する人も多いので、ありきたりではあるが、興味があることをやるのがいいと思う。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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