第21回 日本脳神経減圧術学会に参加してきた。
片側顔面痙攣や三叉神経痛の手術は、手技的にはかなり確立されているので、毎年開催しても新規性という点では得るものは少ないかもしれない。
しかし、たとえば学会や論文で発表されないようなトラブルの話(=最も役に立つ情報)などは、立ち話でしか手に入らないこともあるので、参加する意味はある。
幸い今回は都心での開催であったため、午前中のみ参加した。
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「合併症のない100%治癒を目指して」、というテーマだったが、以前にも書いたように、顔面痙攣も三叉神経痛も著しくQOLを下げる病気であるが、直接生命に関わるものではない。なので、どちらかと言えば合併症が無いことをこそ目指すべきだと思うが、それはおいておこう。
三叉神経痛では、horizontal fissureを開放して、髄液を排液することでワーキングスペースを確保する、という田草川先生が昔から言っていることを各人述べていた。
その中で某大学病院が発表したビデオではかなり血液が流れ込んでおり、「そんなに赤くなったら、後日癒着で痛みが再発するのでは?」と心配になった。
しかも、小脳上部からアクセスできなかったために出血したケースのビデオかと思って見ていたら、別のケースも同様...
三叉神経痛や顔面痙攣は、硬膜内ではほとんど赤血球を見ないはずの手術なので、もう少し、動脈瘤など別の疾患で鍛錬する方が良いだろうと、いう印象。
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3D融合画像などを用いて、supra-meatal tubercleを削る必要があるかを判断する、という演題も毎年のように出るが、観察するだけであれば内視鏡やミラーで十分であり、本当に削らないと細かい操作ができないというのは、かなり稀と考えている。
関西のある病院ではかなりの頻度で削っているようだが、余計な操作は余計な出血のリスクを高めるだけだろう。
と思っていたら、徳島大学永廣教授が、まさにそういう「痛い目にあったので今はあまりやっていない」というコメントを述べられ、我が意を得たりと膝を打った。
しかし、術前に分かったから、神経ブロックやガンマナイフに紹介するか?というと、そういうことは原則ないだろう。 また削る必要がありそうだとなった場合に、開頭範囲を拡大するかと言われると、開頭を広げてもワーキングスペースはあまり大きくならない。
なので、「邪魔ならそれから削る準備をすればいいだろうに」と思うのだが、こういう考え方をしていると偉くなれない。
このセッションの中で、大阪市大からの演題で、同tubercleを徹底的に削除する必要があった1例という報告があった。
初見で三叉神経周りのスペースが狭く、手術が難しいケースであったが、tubercle周辺を含めてかなり削り込んで治療したという内容。
同病院のG先生は非常に上手な脳外科医だが、左利きなので術者が交代になるとすぐに分かる。これは、ちょっと容易には真似できない手術で、勉強になった。
ひとつでも新しいことが学べれば、やはり参加する意味ありという半日だった(午後は病院に戻り外来)。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
*三叉神経痛についてはこちら
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