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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

ロボット支援手術で術者の差は縮小?

更新日:2019年2月20日

脳外科ではまだ研究段階だが、前立腺などではダヴィンチを用いたロボット支援手術によって、機能予後の改善や入院期間の短縮が得られている。


これをもって職人芸であった外科医の技術差は無くなる!、といった一足飛びの議論も見られるがさすがに乱暴なように思われる。


という意見に賛成だ。



以前、神経内視鏡学会で心臓外科の渡邉剛先生(現ニューハートワタナベ国際病院)がダヴィンチによる心臓手術のプレゼンテーションをされていたが、針の持っていき方、刺入角、縫う間隔、針の抜き方など、血管外科医の端くれとしては「さすが!!!」というものであったが、それはダヴィンチが決めていることではない。

「それは操作者(術者)の技術の反映ですよね」

と思って発言したことがあった。


つまり上手い人はロボット支援手術でも上手い。


ただ、手術中の執刀医の一挙手一投足が記録されるので、きちんとフィードバックと改善のサイクルが回れば、「視野が狭くて術者が何やっているか分からない」時代より、技術の底上げが進んで、結果として術者間の差が小さくなる可能性はある。


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ちょっと違うかもしれないが、昔、脳外科手術はルーペや肉眼で行われていて、助手は術者の後から「うまくライトを当てて、術者が患部をよく見えるように」ことを一生懸命やっていたらしい。

もちろん影が出来ると術者から怒られるので、術者の手元を見る余裕などなかっただろう。

しかし、手術用顕微鏡が導入され、次に助手鏡がついて、助手にも術者の操作が見えるようになった。


そして手術内容がビデオに録画されるようになり、ようやく手術の「振り返り」が、術者(と助手)の記憶だけに頼るのではない形で行えるようになり、合併症の原因についても”まともな”議論ができるようになったし、よりよい手術方法が広まることになった。

(議論が上下関係なく自由にできたかは別問題)


それでも、会津若松にいた頃は、「○○病院のxx先生は上手い!」と聞いては、つてを辿ってVHSビデオを取り寄せ、がっかりしたり、また上山先生らの"流出ビデオ"を研究したり、ということを繰り返していた。


今はYouTubeや専門誌websiteでも、多くの著名医師の手術を研究することができ、まさに隔世の感がある。


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しかし、ロボット支援手術は、PDCAが上手く回せなければ、術者の技量の差が小さくなるより、むしろ、老眼と振戦がキャンセルされて、体力勝負の若手より、ベテランに超有利になるかもしれない。


蛇足だが、ダヴィンチのアームの動きは、人の手よりも"自由度"が高く、実際に見てみると、「こういう向きに針を持っていくには...」など、自分の手(指)の関節の自由度を"どうやったらカバーできそうか"想起されて、面白い。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)


しょうもないblogですが、100件になったみたいです。

読んで下さった方、ありがとうございます!!!

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