頭の皮膚は血行が豊富なので、子どものちょっとした怪我でも 結構血が出てびっくりする。
手術となれば、もちろんそれなりの長さを切るので、何もしなければ結構な出血になる。
そのためにepinephrineで皮膚の血管を収縮させ、皮膚の動脈を電気凝固したり、糸で縛ったりする。またじわじわとした出血は皮膚クリップで圧迫止血を行う。
もちろん、切ってすぐに全ての出血点を処理できる訳ではないので、術者と助手がそれぞれ皮膚を圧迫することで、出血を抑えることになる。
このとき、別に新人研修医でなくても、指を全部揃えて圧迫しようとする人が多い。
確かに、血管撮影後に動脈を圧迫止血するときなどは、出血点が見えず、圧が高いこともあるためか、このように止血する。
また頭部の外傷で出血点がどこかはっきりしない場合にも、このように強く押さえることは出血点を探す上でも合理的だろう。
ただ手術の際には、通常はepinephrineなどを用いることもあり、またコントロールされた切開であることから、全力で圧迫止血しなければならないことは、まずない。
そのため、指を揃えた、まるで「ドラえもん」のような使い方をするよりも、5本の指を分離して使う方がよい。
つまり動脈や、出血の勢いが相対的に強い部分を押さえるのだ。
そうすることで、1回に切開できる距離が長くなり、道具の交換の回数が減り、手術時間の短縮に貢献するかもしれない。
また、もし指3本(中指~小指)で押さえられるのであれば、母指と示指を使って別の操作をすることもできる。
サルが母指と示指を分離できるようになり道具を使えるようになったと言われるが、脳外科医がドラえもんのような使い方をしていては進歩がないだろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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