開頭手術で骨を戻すときの話。
開頭手術では頭蓋骨の一部をいったん切り離すことになるが、元の位置に戻すことで周りの骨とくっついてくる。
つまり骨折が治るように、「癒合」が進む。
しかし骨粗鬆症がある方など、頻度は少ないものの、このいったん切り取った骨の部分(骨弁)が吸収されてくることがあり、美容的な問題を起こすことがある。
頭蓋骨の「機能」は脳を物理的な衝撃から守ることである。その意味で機能的に問題になることはまずない。
(edgeが相対的にとがってきて、皮膚が薄くなる方が稀にいる。)
最近ではハイドロキシアパタイト(セラペーストⓇなど)で、骨の隙間を埋めることができるので、このような合併症は (特に未破裂脳動脈瘤などの予定手術では) 起こりにくくなっているが、外傷や脳卒中の手術では、緊急だし、場合によっては深夜のこともあるので、使いにくいことも多い。
その際に、骨の吸収を抑制するために、(独りよがりかもしれないが)参考にしていることがWolffの法則。
つまり「力に対して骨は形を変える」ということで、骨に応力が加わると骨新生方向にremodelingが進むということ。
そのメカニズムとしてはいろいろ言われており、
骨を形作るコラーゲンの結晶線維がずり応力などに対して圧電分極を生じ、周りに誘導電流が生じ、この電流が骨細胞に影響を及ぼすという説。
応力自体が骨細胞の活性に影響を及ぼすという説 があるようだ。
ちなみに骨に力が加わっていないと、いくらサプリメントでカルシウムを摂って日光に当たっていても、おそらく骨吸収の方向に働いてしまうのだろう。
そういう意味でやはりウォーキングなどで、骨に力を加えることが重要だ。
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このWolffの法則を考えて、具体的に行っていることだが...
骨弁は周囲の骨と固定する必要があるが、多くの病院ではチタン製のプレートを用いているだろう。
以前は骨に細い孔を開けて、糸で結んでいた。(今でも時々そうすることはある。)
このときに、骨弁と周囲骨の間に十分「圧が加わる」ことが重要。
そのため、周囲骨にネジ止めするときに、プレートの孔の少し外側(周囲骨側)に止めるようにしている。
チタンには延性があるが、このズレのせいで長さ方向(長軸方向)に引っ張られる形になり、結果的に骨どうしが圧着されることになるはずで、Wolffの法則に従って骨新生が起こるはずだ。
実際にはハイドロキシアパタイトも使っているため、効果の検証はできていないが、病院のコストや医療費の増加には繋がらないので有用と考えている。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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