脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
顔面痙攣の治療
片側顔面痙攣の治療法としては3通りあります。
1. くすりによる治療
顔面痙攣は、神経が異常に興奮しておこります。
そのため、神経の興奮や伝達を抑える薬が有効なことがあります。同じように大脳が興奮して起こるてんかんを抑える薬(抗てんかん薬)が何種類かありますが、その中でクロナゼパムという薬は、顔面痙攣によく効きますが、個人差が大きいです。
また、クロナゼパムを内服すると、ぼうっとしたり、眠くなってしまい、仕事に支障が出る、危なくて運転できないという方も少なからずいます。また少量でもふらふらで歩けないという方もおり、効果と副作用の出方にばらつきがあります。
(薬のせいで転倒して骨折し、手術の決断をされた方もいます)
2. ボトックス
ボツリヌス毒という神経毒があります。これを少量、痙攣している筋肉に注射することで、筋肉の収縮を抑えることで、顔面の痙攣を抑えます (ボトックス治療)
外来でできるので、比較的安全、簡便なことが長所です。
一方、この治療は人為的に軽い顔面麻痺を起こさせる治療なので、注射する量によっては、治療した側が無表情になってしまったり、目が閉じきらなくなったりすることがあります。
また、この注射薬は毒素なので、からだが自然に分解してしまうことで、徐々に効果が薄れてきます。そのため、およそ半年ごとに注射を繰り返す必要が生じます。
また、注射を繰り返しているうちに、予防接種と同じように、患者さん自身のからだの中に、抗体と呼ばれる防御因子ができ、ボトックスを分解してしまうようになります。結果として、効いている期間が3ヶ月程度まで短くなることがあります。
その他、ボトックス自体は、筋肉の収縮を弱める治療なので、ご本人の感覚としてはピクピクが残っているように感じるというのも、欠点の一つです。