未破裂動脈瘤に限りませんが、何か脳の病気が見つかった場合に、「○○しても大丈夫ですか?」という質問をいただきます。
(○○は筋トレだったり、飛行機での旅行、セックスだったりいろいろです)
脳梗塞や脳出血のように、実際に入院するような病気が起こった場合には、例えば
「一般的に2週間くらいで脳の血流は安定化する」
「これくらいのサイズの脳出血なら○ヶ月くらいで吸収されるから」
「血圧が安定していれば」
など、経験的な話、あるいは血圧のような実際の予防策があるので、具体的に特定の行為を「避ける方がよい」とか「やってもいいですよ」ということが言えると思います。
一方、未破裂動脈瘤や脳動静脈奇形では、たまたま脳ドックなどで見つかった場合に、その動脈瘤がいつからあるのか?ということは分かりません。
(脳動静脈奇形は生まれつきのことがほとんど)
なので、見つかった動脈瘤は、数日とか数週間前にできたものかもしれないし、もしかしたら10年以上前から変化していないものかもしれませんが、それは知ることができません。
特に脳ドックで見つかった動脈瘤については、最近できたものではない可能性が高いのだと思いますが、
「それなら、例えば3ヶ月(半年でも1年でも)後にMRIを再度撮影して、変化していなければ、大丈夫か?」
これも難しい質問で、
MRIで変化が確実に捉えられるのか?
(1mmくらい変化していれば、確実に変化していると言えるかもしれませんが、0.5mmくらいだと、撮る機種や撮影条件などにも影響を受けている可能性があります。またできあがった3次元画像だけ見ていると、画を作った技師さんの好みさえ影響していることもあります。)
疑い出すとキリはないですが。
そして「『大丈夫』と言っていいのか?」
これは本当に申し訳ないところですが、都心の病院に20年近く勤務していると、(あまり出血のリスクは高くなさそう)と思っていても、万が一出血して訴えられたら困るな、という思いが少しはあります。
そのため、数回しかお会いしていない、詳しく存じ上げない患者さんに、胸を張って「絶対大丈夫」ということは言えず、(多分大丈夫だと思いますが…)みたいな、奥歯にものが挟まったような、あるいは何か留保するような、言い方しかできていません。
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多くの小型動脈瘤(5mm未満)は、最近できたものよりは以前からあるものの可能性が高いはずですが、例えそれが分かっていたとしても、特定の行動をしても良いかどうかということは、少なくとも確実には言えません。
「その動脈瘤が見つかる前は、普通にやっていた訳ですよね?」とは思うものの、見つかってしまうと頭の端っこで気になると思います。
(自分が脳MRIを受けない理由の一つです)
小型の動脈瘤はあまり出血しない(年間0.5%弱)& 小型動脈瘤からのくも膜下出血では軽症が多いという情報はプラスの情報にはなると思いますが、
血圧コントロールなどの出血リスクのコントロールを十分やれば、"あとはご本人次第"としか言えないのではないでしょうか。
そこまで考えると、事前の十分な説明無しに詳しい検査をするのは、生活の質(QOL)を下げるかもしれないなと考えるわけです。
治療をお勧めする未破裂動脈瘤についてはこちら
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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