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Die with Zero

執筆者の写真: 木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

お金は生きているうちに使おう!

タイトルそのままの内容で、あえて全部読まなくても、およその内容が分かる本です。

要するに「お金はあの世に持っていけないのだから、生きているうちに使いましょう」ということ。


日本では高齢者の方が金融資産が多く持っており、しかも使わずにため込んでいるものだから経済が回らない、ということはよく言われるが、米国でも同じようだ。


大前研一さんも、それこそ大分前から「日本の高齢者は『いざという時のために』預貯金をし続けているが、じゃ、その『いざという時』にいくらかかると思っているのか訊くと、全く考えていない」ということを言い続けているが、全くそういうこと。


実際問題として、今の日本ではまだ、お金が無くて医療が受けられないということは原則ないと言われている。

(ただし、保険で賄われる範囲外の問題、つまり病院の個室代とか、有料老人ホームなどは、資産の問題が絡んでくる。とはいえ、入院したら大部屋で良いと割り切れば、そこまで高額にはならないだろうし、有料老人ホームについては、入居費用、必要な金額と、もらえる年金などから計算することはできるはずだ。)


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と、既に他書で読んだことのある内容ばかりのようにも思ったが、「はっ」と思ったのは


「お金は経験のために使うことで、もっとも幸せになれる」

「ある経験ができる年齢は限られている(場合がある)」

ということ。


経験というのは、勉強でも、旅行でも、美味しいものを食べることでも、なんでもよいのだが、思い出して何度も楽しめるし、一生残る。

(たとえ認知症になって忘れてしまうとしても、忘れるまで楽しめる)


誰かと一緒に経験したことであれば、その人と会うたびに、あるいは別の人との話の中でも、その経験を思い出すことで、楽しむことができる。

人生の喜びとはそういうことではないか、ということだ。


自分がなんとなく分かっていたものの、実際にはやっぱり考えていなかったのは、2番目の指摘。

つまり、経験ができる年齢というのは限られている場合があるということ。


本の中では、友人が仕事を長期間休み、借金でヨーロッパを(バックパッカーをして)周遊してきたことを例にとり、その経験が友人にとって、かけがえのない宝物になっていること、ある程度自由になるお金ができても30代後半になると同じ事はできないし、得られる経験・内容も違ったものになると書いている。


また、単純に体力や筋力が衰えていくことで、楽しめること(スポーツなど)も変わってくる。いやむしろ、"限られて"くるというのは、容易に想像できる。


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もちろん、子供に遺産を残すというのも、人生の目的としてあっていいし、著者はそれを否定している訳ではない。

しかし、もし相続を考えているなら、(税金の問題はあるにしても)生きている間に資産を分け与えることを勧めている。


年齢によってできることが限られているのと同様に、人生でお金が必要な時期にはムラがある。

85歳で亡くなって60歳の”子ども”が相続する、ということが、実際によく起こっているわけだが、人生で一番お金が必要な時期というのは、大学に入ったり、結婚して新居を構えたり、子育ての時期だろう。


そういう必要な時期に分け与えることが、(分け与える本人も含めて)一番皆がハッピーになる方法じゃないかというのは、説得力がある。


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脳外科としての仕事も面白いが、スキーでWhistlerの11kmコースを止まらずに滑るのは、もう体力的に無理かもしれない、(というよりも既にCOVID-19のせいで渡航できない)といったことを考えると、

「退職してヒマができたら」などと言っていたら、やりたいことはどんどんできなくなる、ということを改めて認識させられた1冊だった。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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