タバコを吸っていると、脳卒中のリスクが上がるため、脳外科の外来でも喫煙者の方には禁煙するよう勧めている。
しかし、実際に禁煙される方の中には、体重が増加する方が結構多い。
タバコが無くて口寂しいので、食べてしまうようだが、それ以外にも(味が分かるようになるためか)食欲が増すこと、エネルギー消費が減ることが知られているらしい。
体重増加が少しならまだいいが、肥満となると糖尿病や心臓に負担がかかるため、本当に禁煙が良いのか?という疑問が生まれる。
(脳卒中よりは心臓の方が「ぽっくり」逝けることが多いから良いのでは?という意見はとりあえず置いておく。)
先月のNEJMに載っていた論文
N Engl J Med. 2018 Aug 16;379(7):623-632.
1980年代から行われている3つの観察研究(HPFS, NHS, NHS II, いずれも看護師、獣医などhealth professionalsを対象にしている。)を解析した。
(HPFS (Health Professionals Follow-up Study)は1988年に始まって、2016年でも90%が追跡できている!! ←数万人単位を長期にfollow upするのは無茶苦茶難しい。)
調査開始後、全員がいっせいに禁煙したわけではなく、いったん止めたけど、また吸い始めたという人もいるので、禁煙した人を、
1. 一時的に止めた人(2年毎の質問表の間に再開)、
2. 最近止めた人(2年以上6年未満の期間、禁煙が続いている)、
3. 長期に止めている人(禁煙歴6年以上)
に分けた。
結果としては、2.最近止めた人は、喫煙を続けている人より1.2倍糖尿病になるリスクが高かったが、禁煙を続けていると、5~7年にそのリスクがmaxになって、その後は非喫煙者同等になるという結果だった。
禁煙した方の中には、体重が増えていない方もいるが、体重が増えなかった方は糖尿病のリスクは増えなかった。
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糖尿病のリスクは少し高くなるものの、心筋梗塞など血管系の問題による死亡は体重増加のない人は30%減り (ハザード比0.69)、5−10kg 体重が増えた人では67%減少した!?
どうして体重が増えた人の方が減ったのかは、読んだ限りではよく分からない。
6年以上禁煙している人では、50%減。
他の原因を含めた死亡も、喫煙しちている人よりリスクが減少するが、体重増加のない方の方がハザード比の減少が緩やかだ。
禁煙して太る方がよい?ということなのか、それとも食欲が増進し、栄養バランスが良くなることを反映しているのか?
ちなみに禁煙して18kg以上 (!)体重が増えると、心血管死のリスクが喫煙者に近づくということ。
(タバコを吸っているということは、18kg内臓脂肪を抱えているようなもの?)
あくまで統計上の話ではあるが、禁煙して体重が増加すると、糖尿病のリスクは高まるけれど、心筋梗塞 やその他の原因による死亡が減るということなので、やはりタバコを吸っている方は禁煙しましょう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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