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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

心房細動とステント治療

ファイザー社のMRさんがapixabanのプロモーションのために紹介してくれた論文


N Engl J Med. 2019 Apr 18;380(16):1509-1524. doi: 10.1056/NEJMoa1817083. Epub 2019 Mar 17.


心房細動という不整脈は、心臓の中に血栓を作ることがあり、これが血流に乗って流れ、脳の血管に詰まると脳梗塞を起こす。

これはアテローム血栓性脳梗塞のように徐々に脳の血管が詰まって起こる脳梗塞とは異なり、いきなり血流が途絶えるため、大きな脳梗塞を起こし、場合によっては脳ヘルニアを起こして死に至る病気だ。

(故小渕首相がそうだったと言われている)


血管が詰まったとき、症状に気付くのが早ければ、そして適切な病院に搬送されるのが十分早く、かつ詰まった血栓を速やかに溶かすなり、カテーテルで取り除くことが出来れば、脳梗塞を免れることができる。

しかし、実際に治療対象となり、後遺症無くそのまま自宅に退院できる人はかなり限られている(例えば夜寝ている時に起これば、朝には脳梗塞が完成していたりする)


つまりこのタイプの脳梗塞(=心原性脳梗塞)についても予防が重要になるのだが、一般的には抗凝固薬と呼ばれる薬を飲み続けることになる。


以前はワーファリンという薬を、血液検査を行って量を調整しながら内服コントロールするしかなかったが、現在ではdirect oral anti-coagulant (DOAC)と呼ばれる薬が4種類あり、広く使われるようになっている。(値段は30倍近く違うが)


この抗凝固薬は、テレビで「さらさらにする薬」と呼ばれる抗血小板薬とは違う薬であるが、心臓が悪い患者さんなどは両方の薬を飲んでいたりする。


脳外科は、血管が詰まる病気も、血管が破れて出血する病気も両方担当しているので、「そんなに血液止まらなくして大丈夫なのか?」と常々思っている。


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前置が長くなったが、この論文は、心房細動があって抗凝固薬を飲んでいて、しかも狭心症などで冠動脈にステントを入れた患者さんに抗血小板薬を1種類もしくは2種類飲んでもらった場合の合併症を調べたという内容。


ちなみにステントを入れる治療を行ったあとは、原則として2種類の抗血小板薬を内服することになるが、これは頚動脈にステントを入れる場合も同様だ。


2015年から2018年に4614人の心房細動があってステントを入れた患者さんに1. apixaban (DOACの一つ)かワーファリンを内服する。2.これに加えて抗血小板薬を1種類もしくは2種類飲む(2種類目はアスピリンかプラセボ)を飲んでもらい、半年経過をみた。



出血イベントについては、apixaban では10.5%(241人/2290人)が出血を起こし、ワーファリン群では14.7%(332人/2259人)が出血を起こした。統計学的に有意な差で、ハザード比は0.69( 95%CI 0.58-0.81)だった。

もう一方のイベントとして死亡もしくは入院が設定されているが、apixaban群では23.5%(541人)、ワーファリン群では632人(27.4%)にイベントが起こっていた。

死亡はapixaban 77人(3.3%)、ワーファリン74人(3.2%)。


apixabanの方がワーファリンより出血が有意に少ないのは分かったが、この心不全+狭心症(冠動脈にステント)という患者さんの4人に一人は半年以内にまた入院いうことのようだ。

日本のように入院の敷居が低い訳でもないだろうから、やばい状態なのではないだろうか。


また半年で3%(=1年で6.3%)くらい亡くなる状態というのは、外来でみていても、実感として分かる頻度だと思われる。


もちろん、これらの薬を飲まなければ、それこそ脳梗塞を起こしたり、ステントが詰まって心筋梗塞を起こしたりということになるので、医師のバランス感覚も必要だろう。


ただ、統計では差があってもグラフで書けばどの薬でも上のような感じなので、患者さん自身もご家族も残りのライフプランを考えるべき状態なのかもしれない。


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頚動脈ステントでも抗血小板薬を1種類もしくは2種類内服ということになるが、頚動脈の場合には内膜剝離術という代替手段がある。

しかもこれは冠動脈バイパスほどは大がかりなわけではないし、抗血小板薬を止めても頚動脈が詰まるということはない。


高齢になるほど心房細動は増えるわけであり、内頚動脈狭窄症に対してはやはり内膜剝離術が第一選択であるべきと考える。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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