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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

EANS2018 ②

一番大きな会場で教育をテーマとして、hyper-specializationというか、sub-specialityの話があった。


脳神経外科というのは、おそらく世の中的には「外科」のなかの一専門分野と思われているだろうが、医学界では内科、外科と並んで主要な科(?)とされている。


なので、本邦の研修においても初期研修の後、脳神経外科の専修医となり、初期研修→外科を回った後に専門が始まる(?)心臓外科とは異なっている。


それだけ脳外科が扱う領域が広いということでもあるのだが、各領域についての知識が深まり、治療法が洗練されるに従って、各領域をより深く理解することが問題になる。


しかしもちろん脳外科医を名乗る以上は、脳外科全般の知識も必要ということで、特に限られた研修期間をどう割り振るかということは、どこの国でも問題になっているようだ。


ただし、タイトルには書いていなかったが、このセッションは小児脳神経外科領域の話で、そのせいもあるのか、あるいは朝1番だからか、参加者はまばらであった。


pediatric neurosurgery, 小児脳神経外科
ディスカッションの様子

やや意外だったのはヨーロッパでも、小児脳神経外科はあまり人気がないということだった。

その理由として、日本と同じく患児だけでなく親への対応が大変だったり、給料が安かったり、なにより患児が亡くなったときのダメージが大きいということを挙げていた。


ただ、小児は患者の「先が長い」ので、手術によって提供できる価値が大きい、ということが小児ならではの魅力であると言っていた。


これは一理あるが、では小児の病気は小児脳外科専門医が全て手術するのか?というと議論のあるところだ。

例えば小児の脳腫瘍を小児専門の医者が切る方がいいか、それとも脳腫瘍の専門家が手術する方がいいか、という点においては日本の脳外科病院の多さを考えると後者だと思っている。


発表者の結論としては、小児脳外科の研修で学ぶべきことは、水頭症の急性増悪、脳卒中などの救急対応と、一般的な治療適応に関する知識ということだった。


あとはそのために、いろいろな研修コースを設けて、「上手くいってますよ」という話と理解した。(この手の、自画自賛的発表が多いのもEANSの特徴か?)


パネルディスカッションでは、発表したオピニオンリーダーの他に、女性のドクターが3人そそくさと現れ、「ベルギーのように小規模な施設がたくさんある国と、集約化が進んでいる国では前提が異なるから、そこから議論を始めないといけないわよ」みたいな「そもそも論」を理路整然と話し始めて面白かったが、結局は国別に考えないと仕方ない、という結論だったと思う。


ちなみに自分は小児専門ではないが、周産母子・小児センターなので身近に小児の患者を見ているが、少なくとも都内では水頭症の緊急事態と脳卒中に対処できれば、後は専門家に任せるのが一番良さそうだ。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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