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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

尿酸値とビールとの関連?

Medical Tribuneで取り上げられていたBMJの論文


BMJ. 2018 Oct 10;363:k3951. doi: 10.1136/bmj.k3951.

(open access)


高尿酸血症は通風の原因になり、またビールが尿酸値を上げると言われることから、壮年期にもっとも気になる血液データの一つだろう。


高尿酸血症、脳卒中
ビールはどれくらい尿酸値と関連?

この研究では,既に行われた5つの調査データから、通風にかかったり、腎臓病のない16,760人の血液データ、食生活、とともに遺伝子データを調べ、尿酸値の高い/低いに対する関連を調べた。

その結果、やっぱりビールやワイン、ジャガイモ、赤い肉(牛肉、豚肉、羊肉)は尿酸値が高いことと関係しており、タマゴ、ピーナッツ、チーズ、柑橘類以外の果物は尿酸値が低いことと関連していた。

Diet scoreというのがあって、健康的な食事をしているとスコアが高くなるという指標がある。Harvard Healthy Eating Pyramid guidelines, DASH diet score, Mediterranean diet score から、これらのスコアリングに用いられている食材をどれくらい摂取していたかも調べている。


このうちHealthy Eating, DASH、Mediterranean diet scoreが高いこと(=健康的な食事)が尿酸が低いことと関連していたが、女性に関して言うとDASH scoreのみが関連していた。


関連しているといっても、それぞれがどれくらい関連しているかによって、例えば運動する機会を増やすとか、オリーブオイルを摂るようにする対策が取れるというもの。


その関与の程度を調べたところ、ビールや赤身肉など単体の食品が、血液の尿酸濃度に影響している度合いは1%未満だった。

また健康な食事スコアとは0.3%程度の関連だった。

これは、この手のスコアではいろいろな食べ物について、例えば週に何回どれくらいの量を摂取しているか、という組み合わせをスコア化するため、関連度合としては小さくなるのだろう。


これらの食事関連と比べ、遺伝子多型の差は23.9%寄与しているという結果だった。


つまり「ビールの30倍、自分ではどうしようもない因子で決まっている」という、ややがっかりさせる、(あるいは喜ばしい?)データ。


最初読んだときには、「それならビールを控えるとかしなくていいんじゃん」と思った...


が、よく考えてみると、この結果は、そもそも痛風、慢性腎臓病、尿酸値を下げる薬を飲んでいない、つまり健常者でどうかという研究であるため、実際に痛風を患っている方の話ではない。

痛風で治療されている方に関しては、やはりビールや赤身肉を控えるなどの対策を摂っておくべきなのだろう。なんといっても「風が吹いても痛い」という病気なので。


ただ、痛風や、尿酸値を下げる薬を飲んでいない方で、健診などでたまたま尿酸が高いとされた方に関しては、食生活の影響よりも、遺伝的な、つまり体質的な問題の可能性が高いのかもしれず、”不摂生!”のレッテルを貼るのは間違いなのかもしれない。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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