津川友介氏がtwitterで取り上げていて、通勤途中のpodcast (BBC World News 2018/08/18)でも取り上げられていたLancetの論文
Sara B Seidelmann, Brian Claggett, Susan Cheng, Mir Henglin, Amil Shah, Lyn M Ste en, Aaron R Folsom, Eric B Rimm, Walter C Willett, Scott D Solomon
糖質制限(low carbohydrate diets)は、少なくとも短期的には体重減少に繋がることからAtkins dietなどの形で取り上げられ、比較的メジャーな減量法である。
しかし、その効果、というか長期的にどうか、特に死亡率に影響があるのでは?ということが言われていて、この研究もその問いにある程度答えるもの。
45歳から64歳のアメリカ人 15,428人を25年にわたって、定期的に生活習慣などの質問に答えてもらい、全死亡との関連を調べた。
また、同様の観察研究の結果のmeta-analysisも行っている。
経過中に6283人が死亡しており、カロリーの50-55%を炭水化物で摂取するグループが一番死亡率が低かった。
このグループと比較すると、炭水化物によるカロリー摂取が少ないグループも、多いグループも死亡率が高かった。(つまりグラフで書くとU字型のカーブになる)
meta-analysisの結果、炭水化物が少ないグループではhazard比 1.20, 多いグループでは1.23という結果。
つまり、カロリーの半分を炭水化物で取っているグループの1.2倍程度死亡率が高いということ。
で、津田氏のtweetにあった部分で、炭水化物が少ないグループで、足りない(?)カロリーを動物性脂肪/タンパクで摂取しているグループは1.18倍死亡率が高い一方、植物性油脂/タンパクにより摂取している人は1.22倍死亡率が”低い”。
*******************
この論文のimplicationとして書かれているが、炭水化物が50-55%というのは、(蛋白・脂質をたくさん摂る)アメリカやヨーロッパでは多い基準であるし、反対にアジアでは少ない部類になるということ。
炭水化物を少なくして動物食をする欧米人は、その割合を変えた方が良いと書いてあるが、アジア人に関しては言及していない。
なので、日本人にそのまま当てはめて良いのか?という問題がまず生じるが、論文で引用されているNakamura et al.のNIPPON DATA80という研究では、
普通から多めの炭水化物+動物食のハザード比 1.0倍 (つまり変化なし)
普通から多めの炭水化物+植物性タンパク/油脂のハザード比 0.92倍 (CI 0.80-1.09)
と日本人の平均的な炭水化物摂取量だと、あまり関係ないのかもしれない。
この研究のlimitationとして著者らも指摘しているが、25年間の間に食習慣が変わる可能性はあるだろう。6年開けて質問票で調べてはいるが、食事内容を長期に経過をみるというのは研究デザインに工夫が必要だろうなあと思う。
また結局、アジア人と欧米人で、かなり傾向がことなる可能性があるので、きちんとした研究だけ取り上げてmeta-analysisにしたからといって、結果をそのまま信じるわけにはいかないのかもしれない。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
コメント