微小血管減圧術学会から出たDPC病院の現状で、2017年の学会で発表された内容が論文として掲載された。
Neurol Med Chir (Tokyo). 2018 Jan 15;58(1):10-16. Epub 2017 Nov 2.
The Current Status of Microvascular Decompression for the Treatment of Trigeminal Neuralgiain Japan: An Analysis of 1619 Patients Using the Japanese Diagnosis Procedure Combination Database.
2010年6月から33ヶ月の間に、日本全国で1619件の微小血管減圧術が行われ、10万人あたりでいうと0.46人という割合だった。
くも膜下出血が10万人に20-60人、原発性脳腫瘍が10-15人と言われていることを考えると、やはりかなり少ない手術といえる。
三叉神経痛に対する治療としては、手術の他に内服治療や、神経ブロック、γナイフ、(鍼灸?)もあるので、有病率とはかなり異なる。
(この期間、三叉神経痛に対するγナイフは保険適応外。自費で60万円払って治療した人はそれほど多くないだろう)
この中で、手術の効果(有効率)と、少ないながらも合併症に関する情報があった。
それによると、治癒・軽快はそれぞれ5.8%、91.8%ということだった。
先日読んだ、「高齢者の方が成績が良い」という論文と比べると、大分成績が良いが、手術の効果としてはやはり90%強の患者さんで内服(~通院)が必要なくなるというのが、体感的にも納得いく数字である。
ただDPCデータなので注意しなければならないのは、症状は残っているけど、手術治療としては問題なく終わっていて、入力上「軽快 」としているものが含まれている可能性があること。
つまりもう少し成績が良くない可能性がある。
もう一つ合併症だが、亡くなった方が0.2%(4人)いたということ。
このデータでは死亡以外の合併症は分からないが、自分が担当した患者さんでは平均の入院期間は10日程度なので、諸事情があるとしても3週間以上の入院(~10%くらいか)は何らかのトラブルがあった可能性がある。
微小血管減圧術自体は定型的な手術であるが、自分の手術の説明の際にも、大トラブルが起こると生命に関わる可能性があるということは説明している。
0.2%という数字で説明できるのは、リスクコミュニケーションの上では役に立つかもしれないが、その一方で直接生命に関わる病気ではないので、1000人に4人亡くなると説明されると無茶苦茶怖い気もする。
三叉神経痛では、椎骨動脈本幹や脳底動脈が責任血管の場合や、再発症例は極端に難しくなるのも確かだ。
この4人がそういう難しいケースだったのかどうかは分からないが、何らかのトラブルが起こると生命に関わる手術であって、当たり前だが油断はできないということを再認識した。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
*三叉神経痛についてはこちら
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