また同一施設での「開頭手術 vs ガンマナイフ」の論文
J Neurosurg. 2018 Jan;128(1):68-77.
University of California, San Francisco (UCSF) で治療された、初発の三叉神経痛の患者さん340人(手術164人、ガンマナイフ 168、神経ブロック8人)を後方視的に解析。
特に若い方には手術をファーストチョイスとして勧めているため、患者背景はガンマナイフの方が高齢の方が多く、そのためか追跡不能例が多い。
それでも約4割が5年以上経過を見られており、術後比較的長期間の成績を発表している。
海外の論文では、開頭手術の方法が、日本で行われている方法と若干異なることも多いので、手術の方法も重要だ。
開頭手術の手術法としては、「当たっている血管を三叉神経から剥離して、テフロンフェルトを用いてpadする」としている。
padのニュアンスが分からないものの、いわゆるinterpositionと思われる。
ガンマナイフは、三叉神経の脳槽部分に4mmコリメータで80G照射するとあるが、その具体的な部位に関しては言及されていない。
結果は、手術(と照射)後すぐの効果については、手術を受けたグループの96%が痛みが消失していたのに対して、ガンマナイフは75%だった。
最終調査の時点で、手術群の58%が薬がなくても大丈夫な状態だったのに対し、ガンマナイフ群は46%だった。
この結果も、ちょっと悪いのではと思うが、どうだろう。
手術とガンマナイフ、それぞれに関して寄与した因子をCox 比例ハザード分析で調べているが、手術に寄与した因子は、
三叉神経痛を患っていた期間 (p=0.006)
シンプルな血管をどけるだけでなく、リゾトミー(rhizotomy)を行われた場合(p=0.013)
だった。ただし、罹患期間に関しては、ハザード比1.005 (CI 1.001~1.008)なので、20年患っていた人は、1.1倍再発しやすかったということだろう。(ほとんど意味はない。)
rhizotomyが再発に寄与する、というのも手術中に「犯人はこの血管だ!!」という確証が持てなかったか、太い血管が圧迫していて、動かせなかった可能性がある。
つまりシンプルな手術で終われないには、それなりの理由があるのではないだろうか。
ガンマナイフについては、照射後に感覚低下が起こった場合は再発しにくいとなっている。
ガンマナイフでは合併症が無かったということになっているが、 感覚低下は合併症ではないのだろうか。
(「予期せぬ」合併症しか、合併症としてカウントしていない可能性がある。)
またガンマナイフはもっとも侵襲の低い (least invasive)な治療としているが、三叉神経に治せない傷を付ける治療が本当にleast invasiveなのだろうか?
繰り返しになるが、手術法に関して、日本で行われているようなtransposition主体、つまり三叉神経には何も当たっていない状態にする手術とは, 結果が異なるんじゃないか。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。特に三叉神経痛に対しては可能な場合は手術が最善の治療と考えており、文中の内容にはバイアスがある可能性がある。)
*三叉神経痛についてはこちら
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