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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

いちばん健康に良い酒量="ゼロ "!?

更新日:2019年1月19日

アルコールに絡んで、昨年話題になったLancet誌に載った論文。


Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1015-1035. doi: 10.1016/S0140-6736(18)31310-2. Epub 2018 Aug 23.


Grobal Health Data Exchange (GHDx)とPubMedからデータを集め、592研究から3992個の相対リスク推定値(relative risk estimates)を抽出。 全部合わせると28,000,000万人(!)のデータということなので、いわゆるビッグデータの解析研究ということになる。


従来、アルコールには心血管イベントを防ぐ効果などがあるとされ、酒好きを励ましてきたのだが、この研究の結果からは、トータルに考えると、

  • 飲酒にいいところはない

  • 適切な酒量はゼロ!

という結論だった。(95% uncertainty interval 0.0-0.8 g(エタノール)/day)

マジか….!?


実際のところはどうだろう。

たしなむ程度には酒好きな身としては、無視できない結論なのだが、実際に読んでみると、


まずMethodのところで、1.「旅行者による消費や、自分で醸造して飲む人もいるため、アルコール販売量(額)として補足できない部分を新たな方法で補正した」と。

この時点で既に、自分のライフスタイルに関わる論文ではないように思われた。


で、集めたデータから回帰分析を行って、standard drink daily(エタノール換算で10g/day)と、アルコールのせいで起こる障害や病気について障害調整生命年(DALY:Disability -adjusted life year)との関係をグラフ化した。

*エタノール10gということはビール(5-6%)だと200ml、日本酒(15%)だと1/3合=67ml


ちなみに”DALYは、「早死により失われた期間」と「疾病により障害を余儀なくされた期間」の、双方の期間を慢性疾患による影響として最も妥当な指標であるとみなしている。1DALYは、それゆえ、1年間の健康生活が失われたことと同等である。” Wikipedia から引用。


日本のような国では交通事故、食道癌や咽頭癌が若い人の直接的に問題になっている。

また加齢とともに脳出血への寄与が問題となるが、interpersonal violence、つまり酒に起因する暴力でのDALY上昇(障害)が増えているというのが興味深い。

(高齢の方が抑制が効かない?)


alcohol, DALY
若い人でも癌が目立つ。灰色は交通外傷。

また1日の飲酒量と病気の相対リスクのグラフでは糖尿病と虚血性心疾患で、かろうじてJカーブ(つまり少量なら利益がある)になっているが、全部ひっくるめると、酒量が多くなるほどリスクが上がるという結果であった。


alcohol, DALY
酒量が増えるとリスクが増える(黒線)左上は女性の心疾患

考察でロシアのアルコールの惨状に言及されており、世界の人々の健康のためには重要な知見であって、政策的には「禁酒法」でも出すべきなのかもしれないが、多くの日本人の消費量ではあまり関係ない話かもしれない。


おそらく日本でも同様の研究があるのだろうが、

最善の酒量はゼロ、とLancetに載っていたぞ」と大騒ぎする話でもなかったか。


またこれはあくまで疫学の話。

大怪我したり、他人に迷惑かけずに楽しく飲む分には、その方が良いだろうという、自分の思い込みを覆すものではなかった。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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