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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

Dual platelet療法は脳梗塞の予防に有用か? (again)

CHANCE trialで、一過性脳虚血発作や軽い脳梗塞の患者さんに対してaspirin単独の治療よりもaspirin+clopidogrel (dual platelet)を併用する方が脳梗塞の再発は少ないが、頭蓋内出血は0.3%で変わらなかった、という結果だった。


で、先週のNew England Journal of Medicineの論文で、aspirin単独と比べてこの2種類を使う方が良いのかどうかという研究。


N Engl J Med. 2018 Jul 19;379(3):215-225.



「何を今更?」と思ったが、実際には上記のCHANCE trialより先に研究が始まっており、2017年に打ち切られたというもの。


CHANCE trialは中国での研究ということで、やはり恐るべし中国

沢山の患者さんを集めて統計学的な議論をするとなると独走状態になりうる。


今回発表のPOINT trialでは、83%がアメリカから、その他EU, Austria, NZなどの269施設が参加した、多施設前向きランダム化試験。


NIHSS3点以下の軽症脳梗塞、もしくはABCD2 score4点以上の一過性脳虚血発作の患者さんを対象として、aspirin (50mg~325mg) 対 aspirin + clopidogrel 75mg/日を内服してもらって、脳梗塞/心筋梗塞など虚血イベントの差を調べた。


同時に、頭蓋内出血、失明するような眼球出血、輸血するような出血などmajor bleedingの発生をprimary safety endpointとした。


で、結果としては想定していたよりも出血の合併症が多かったため、患者さんのrecruitが予定に達する前に終了となった。


asprin群で27.5%、併用群で29.6%が薬を飲まなくなっていた。

90日時点で併用群の方が脳梗塞/心筋梗塞などが少なく、併用するとハザード比は0.75、つまり33%(4/3)起こりにくくなった。


抗血小板薬, dual platelet therapy, クロピドグレル
併用療法の方が虚血イベントが少ない。

一方で、出血のハザード比は2.32倍だった。


抗血小板薬, クロピドグレル
全体としては少ないものの併用療法の方が一貫して出血性合併症が多い。

その他、CHANCE同様、虚血イベントは最初の1週間以内に起こることが多く、その後の発症は少ない印象。出血は一定の頻度で起こっていると言える。


併用療法はこの期間の虚血合併症を防ぐ効果が高いので、少なくとも短期間であれば、この治療はありだと考えられる。


白人の方が閉塞性合併症が多く、出血しにくいと言われるが、CHANCEよりも出血合併症が多かったのは、アジア人の方がclopidogrelが効きにくい人が多いからかもしれない。


また、この調査では、血小板凝集能検査などは行われていないようなので、日本の(きちんとした)外来診療では結果が異なってくる可能性はある。


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ここからはまたポジショントーク。


頚動脈狭窄や脳動脈瘤の治療でステントを使うと、少なくとも3~6ヶ月程度は併用療法することになる。

いつまで併用するかは術者のこのみによるが、長期に服用するのであれば、やはり出血性合併症のことを心配するべきだろう。


とくに大きくない未破裂脳動脈瘤でステントを使う治療というのは、くも膜下出血を予防できても、脳梗塞や脳出血のリスクを増やしている可能性も考えるべきだ。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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