この小型動脈瘤の論文、小型瘤の1/3以上が治療を受けていたのも驚きだが、個人的にはfigure 1.の方が興味深い。

UCAS Japan研究の結果では、未破裂脳動脈瘤の年間出血率は0.95%であり、それぞれの場所・大きさ別に計算されるハザード比と、この出血率から、リスクを表にしている。

この表は便利なので、患者さんへの説明に用いている脳外科医は多いと思う。
ただ、何度も書いているように、UCAS Japanでは治療の影響が無視されているので、この表をどれくらい信用していいのかは疑問の余地がある。
なので、各部位・大きさ別に治療された割合も示すことで、患者さんの(手術を受けるかどうかの)意志決定に貢献できるはずだ、というのが自分の論文の主旨だった。
そこで、上のグラフに戻るが、例えば5mmの動脈瘤は1200個強登録され、その半分(~600個が治療を受けている。残りの600人のなかでくも膜下出血を起こしたのが9人ということのようだ。
この3年くらいの中で出血を起こしたのが9人というのが、多いかどうかは判断の別れるところだが、5mm程度であれば治療リスクは1%以下であろうから、リスクが高そうなものは治療されていることを考える必要があるだろう。
また10mmのところを見てみると、250個くらいの動脈瘤が登録されている。
60個くらい治療を受けていて、残りの190個くらいのうち10個の動脈瘤から出血を来している。
なので、10mmだと3年あたり5.3%-最大28%くらいなのだろう。
(治療された動脈瘤が、もし治療しなかったら全て出血していたと仮定場合の%)
16mmより大きい動脈瘤は、全体の数も治療された件数もグラフからは判別できないが、この人数をもって何%の出血率というのは、かなり不正確になりそうだ(表では信頼区間 (95%CI)として表現されているわけではあるが。)

(右側のグラフでは折れ線になっているが、19mmは0%で20mmだと20%になっているし、40mm越えの方が3人登録されていたようだが、残念ながら3人とも出血されたようで、”100%”になっている。)
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UCAS Japan自体は、もちろん疫学統計の専門家が最初から入っていて、年間1%の出血率だとしたら1521人年の観察が必要ということで、登録が開始された。なので、結果の0.95%という値は、「未破裂脳動脈瘤」という大きなくくりでみると100人に一人くも膜下出血を起こしたよ、ということだ。
10mmより小さい動脈瘤と、それより大きい動脈瘤では(治療の影響ももちろんだが)、根拠となる観察期間がかなり小さいことに留意する必要がある。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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