少し前のBBC Newsで「最近の医学生は切ったり縫ったりが下手だ」というのがあった。
優秀な学生が医学部ではなく理工学系に流れている、という話かと思ったが、high academic gradeはあるが手先の作業はダメ、ということらしい。
「手で触って行う知識・知見全般(general tactile knowledge)が欠けている」とまで言っている。
"スワイプ"で何でもできることが手先の動きの発達をダメにしているというのは、確かにあるかもしれない。
手術の師匠の一人が「そもそも肩関節で食事をするやつらに(日本人が)技術で劣るはずがない。」と言っていたのを思い出したが、箸を使って食べているだけで、日本人(及び東アジア人?)は、この点においてアドバンテージがあるように思う。
特に中国では、脳外科に関して言えば、脳外科医の数が少ないこともあって、器用+慣れの効果が如実に表れていると思う。
また、こういう一面が強調されて、TVのワイドショーなどで、「医学部の入試は,試験の点数よりも手先の器用さの方が大事じゃないの!?」という適当なコメントがなされたりする。
「そこの血管、つないどいて」みたいな仕事だけなら、それでも良いかもしれないが、実際に手術全体・手術前後の治療を企画・管理するとなると、そういう単純な議論にはならないだろう。
(逆にセッティングが整った状態でのバイパスの手技というのは、そのレベルの話。)
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最低限の器用さは必要だが、一方で、不器用な外科医の方が、患者さんの状態をなんとか良くしようとして、新たな器械や道具、治療法を開発するモチベーションが高いという面もあったりする。
器用な外科医は、何でも小手先でなんとかしてしまう面があるため、職人芸の域を出ないということになりかねない。
だから、意図的に「新しいこと」に挑戦する必要があるかもしれない。
(もちろん患者さんの安全を担保して、だが)
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記事では、政府は「美術」などのcreative subjectの重要性を口にするが、実際には学校の成績は数学などcore subjectの評価が大きいと述べている。
Creative subjectが学校で学ぶべき事なのかどうかという疑問もあるが、利用できる時間は有限だ。
何をしないかを考えることが子供の頃から必要なのだろうか。
今の子供~学生はいろいろ求められて大変だと思う。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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