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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

開頭で血栓回収術

更新日:2021年5月2日

脳梗塞にはいくつかの種類がある。

その中でも、心臓などから血栓が流れてきて脳の血管に詰まるタイプは塞栓性脳梗塞と呼ばれるが、影響を受ける脳の範囲が広く、重い後遺症が残ったり、急性期に死に至ることもある。


幸い現在は予防法もあり、また”タイミングがあえば”治療法もある。


タイミングが合えばというのは、間に合えばということだ。


太い血管が詰まって、例えば半身麻痺の症状が出ていても、実際に神経細胞が死んでいなければチャンスはある。

たとえるなら、腹が減って動けない状態でも、餓死するまでは時間があるようなものだ。


しかし、その時間は、短い


詰まった血管の場所と、もともと持っていたバイパス経路の発達具合によっては6時間くらい余裕がある場合もある。

その一方で、頚動脈が詰まって、バイパスが全くない場合は、いくら急いでも”アウト”なことも。


なので、いかに早く詰まっている血栓を取り除き、血流を再開させるかが重要だ。


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神経細胞が死滅する前に詰まっている血栓を取り除く治療として、カテーテルによる血栓回収療法という方法が広がってきている。

カテーテルを脳の血管まで進めて、詰まっている血栓を回収し、脳への血流を再開させる治療だ。


脳神経外科
ステントで血栓をキャッチ

もちろん、全ての患者さんの後遺症を防げるものではない。


しかし、2000年代初頭の(自分もやっていた)マイクロカテーテルで血栓溶解剤を流し、血栓が溶けるのを「期待する」治療とは隔世の感がある。


是非はともかく、全国津々浦々、このカテーテル治療が受けられるようにしよう、という目標が立てられている。

(都心部でさえ1日10件程度(しかも病院が多くて分散されている)の病気のために、専門家を広く配置するのは資源の利用方法として

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これはカテーテル治療だが、この血栓を開頭手術で取り除く、という方法もある。

開頭して、詰まった血管を露出し、切開して、中の血栓を取り出すという治療だ。


当然、切開した血管は、縫って塞がないと大惨事になるし、縫えずに血流を止めたままだと、そのまま脳梗塞になってしまうので、何のための治療か分からない。


技術的にはそれなりに高度なものが要求されるし、しかもスピードが要求される。

しかし、個人的には、(脳外科手術の中では例外的に)「それはカテーテルでいいんじゃない?」という意見だ。

開頭手術で行うメリットも一応あって、高齢者の曲がりくねった大動脈や頚動脈を無視して詰まった血管にアクセスできるため、カテーテルを進めるのが難しい高齢者(の一部)には有効なのかもしれない。

また、血栓がバラバラになって、さらに末梢に流れていった場合も、開頭範囲に見えていれば、そこの血管を切開して取り除くことができる、というDr.もいる。


しかし、当然デメリットはあって


全身麻酔が必要

これだけで時間のロスになるが、役割分担ができていれば、F1レースのように時間を短縮することはできるかもしれない。

(実際に、この治療を行っている病院は、脳外科単科病院など、脳外科のやりたい治療が比較的自由にできる病院が多い)


②脳を露出したときには、血栓が流れてしまっていて徒労に終わる可能性

これは経験したことがないのであくまで想像だが、カテーテル治療ではしばしばある。


詰まっている血栓は、そのうち溶ける。

ただ、溶けるまで脳の組織がもたないから、治療するのだ。


開頭して血栓がなかった場合の徒労感と、患者さんの身体的負担を思うと

「替わりがあるのであれば、是非そちらに…」と思っている。


③病気自体が合併症(併発症)

この病気の本体は、心不全なり心房細動(不整脈)なので、これをなんとかしなければ、また詰まることになる。

手術すなわち完治といかないので、個人的にはやり甲斐をあまり感じられない。

幸い勤務先には情熱がある血管内治療医と若手がいて助かってます。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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