日本ではバイパス手術でrecipientの動脈にピオクタニンを用いてマーキングを行うことが多い。
recipientのマーキングにもいくつかコツがあるが、自分が日々気を付けていることを記しておく。(もちろん定型手術なので、それは○○先生も言っていた、ということもあるだろうが悪しからず。)
1. Donor 断端をすぐそばに置いてマーキングする
適切な長さのマーキングが必要だが、吻合する相方が視野に入るようにして行うことで、「適当な」長さを把握しやすい。
2. 線を引くのではなく、点を置いて繋げる。
マーキングするとき、ゼロピンの間に表面張力で色素を貯めて描くことが多いと思われる。
ゼロピンを万年筆のように用いるわけだが、このとき、いきなり切開線を描こうとすると、液が周りに流れたりして、上手く引けないことがある。
その対策として、小さな点(dot)を切開線上に「置いて」いくようにすると、液だれが少ない。(後述の吸引と併用することによる効果)
3. 厳密に同じ長さにするのではなく、donor断端の5~15%長くマーキングする。
前項とも関わるが、donorをそばに置いて描くのだが、ここで厳密にdonor断端と同じ長さにすることにこだわるよりは、少し長めにarteriotomyをデザインする方が簡単。
人間の眼、というか脳は、色素のついた部分の中で「どれくらい切開すれば良いか」というのを考えるのは得意のようで、この部分はいい意味で「適当」でよい。
4. マーキングを細くしすぎない
この線の(理想的には)真ん中を切開するので、あまり細いとムダに難易度を上げることになる.
細い線の真ん中を切るることはバイパスの成功率に寄与しないだろう。
5. マーキングを濃くしすぎない
マーキングの色が濃すぎると、内腔/ recipientの断面/ 外側のコントラストが低くなってしまうため、せっかく色素を付けた意味が薄れてしまう。
海外のビデオをみると、何も色素を用いずにやっているものも多いので、薄めに付いているだけで良いはずである。
6. 描きながら近くで吸引する。
細かいtipsであるが、マーキングしている時の左手(非利き手)は、吸引管を持って、色素を塗っている周囲の「空気」を吸引する。
これによって、着色するrecipientの壁を乾燥させて、色素が流れるのを防ぐとともに、おそらく色素の溶媒の気化を早めるため、思った通りの線を引きやすい。
このようにマーキングだけでも、いろいろこだわるところが沢山ある。
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