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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

手術ビデオの編集について

更新日:1月31日


脳外科の手術で,特に顕微鏡を用いる術では、手術動画をビデオで残すことが多いです。

(たまに録画し忘れることがあり、比較的稀な疾患や、(学会発表で使えるかもしれない)会心の手術の場合、上司から大目玉を食らうという事例を何度か目撃しました。)


脳外科の手術は比較的時間がかかるものが多いため、院内のカンファレンスや、後で見返す等の目的にしばしばビデオの編集を行います。


この記事は、編集をする際に考えるべき内容と、tipsについて書いておきます。

(本当は少なくとも最初は上司が、「このシーンは入れよう、このシーンは要らないね」と指導するのが筋かとは思います。)


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まず「何のためにビデオ編集するか?」によって、当然内容が変わってきます


ビデオ編集自体に、脳外科医としての教育効果があると思っていますが、それについては別に書いています(リンク)


ビデオ編集の目的としては、編集したビデオをどこで使用するかが大事です。


学会発表

症例報告:5分程度の発表であれば、そのうちビデオに当てられる時間は30秒〜3分程度。発表の重点がビデオに表現されているものなのか、経過や疾患自体にあるのかで長さも変わってきます。


総説的な発表:10〜90分とか尺の長い発表で、トピックとして、いくつかの例の一つとして提示する場合は、症例報告とはやはり変わってきます。また聴衆が、何を期待しているか、その発表で何を言いたいかにも依るでしょう。


(注 手術ビデオも患者さんの個人情報という考え方が一般的なので、学会で使用させていただく場合は、少なくとも口頭で同意いただくことになっている病院が多いです。)


院内カンファレンス

入院中の患者さんの情報を把握するためのカンファレンスでの情報提供としてのビデオを編集するのは、上記とはまた変わってきます。


  • 順調に経過した手術であれば、”一般的な”内容(後述)


  • 何かトラブルがあった場合には、その場面。それに先行する原因があったなら、それにも言及するべきです。

  • トラブルからどのようにリカバリーしたか。

  • 経験値が増えてくると、合併症とその対処が一番興味があるところになります。


  • リカバリーの仕方によっては、例えば動脈から出血することがあって、圧迫止血で止まったというような場合には、(術後早い時期に血圧が上がるようなことがあったら、また出血する可能性があるな)とか、術後の管理に影響する場合もあります。また当直で呼ばれたときに、考えるヒントになるかもしれません。


また、もし自分が担当した部分があるなら、その中で

  • うまくできたと思う部分

  • 次回チャンスがあれば、こうしたいと思う部分

を4:6くらいで、入れてもよいでしょう。他の仕事や時間外などで手術を生で見られなかったSeniorの医師も、一応、若い医師がどの程度のことができるか、どれくらい手が動くかなどを知っておきたいと考えています。


教育病院であれば尚更です。


これは全員に見せたいというようなスゴ技(?)や、珍しい破格は入れましょう。


朝などで時間が押している場合には、全体の長さも考慮する必要があり、手術の種類、術者によりますが、概ね3〜5分程度に編集するのがよいと思います。(施設によります)


アーカイブ

自分が後日、「そういえば○○先生が同じような手術をしていたな」と見返す場合、1本の未編集のビデオを全て見直すのは現実的ではありません。

そのような目的には10〜15分、せいぜい20分程度に、エッセンスをまとめたビデオを作っておくとよいかもしれません。


アーカイブビデオを作っていても、それをそのまま学会発表に使えることは稀ですが、「粗編集」と考えれば、その粗編集のクリップを切り貼りすることで、比較的短時間で学会用ビデオにできる場合もあります。


つまり、目的によって入れるべきシーン、長さが変わる訳です。


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ビデオ編集のTips


それほどTipsがあるわけではないですが、自分が言われたことを書いておきます。


ビデオを止めなくても、自分が説明できて、視聴者が解剖を把握できるようにする。

一般的に連続性が無い、新しい場面が出てきて、解剖を把握するために5秒かかります。

なので、自分が十分解剖が分かっている場合で最短5秒、見てからよく考えなければならない場合は8~10秒くらいの長さで、解剖(位置関係)が把握できるシーンを入れます


強拡大は解剖の把握がしにくい

顕微鏡手術し始めのころは、強拡大のシーンが多くなりがちですが、全体像の中のどこなのかがよく分かりません。なので、強拡大のシーンの前には全体が分かるシーンを入れましょう。


必ずしも1倍速で再生する必要はない。

院内のカンファレンスなどでは、時間が押していることもあるでしょうから、例えばバイパスの操作やCEAのシャント出し入れの操作など「入れる方がいいけど。。」という場面は、倍速とか10倍速でも問題ありません(トラブルが無ければ)。学会発表などでは、視認できるように(x10倍)などとテロップを入れればOkのことが多いでしょう.

(シャント出し入れを必ず編集に入れようということではありません)


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(一般的な内容)とは

クリッピング術の場合、

  • 硬膜をどのように切開したか

  • Sylvius裂をどの当たりから解放したか

  • 母血管と動脈瘤の全体像

  • 中大脳動脈瘤なら、M1~M2と動脈瘤、内頚動脈瘤なら視神経、内頚動脈、A1、M1、前脈絡叢動脈などとの位置関係

  • 動脈瘤のneck(近位、遠位)の剥離

  • 可能ならクリップブレードの形状(直、bayonet型、有窓など)が分かるようなシーン

  • 閉鎖した後の状態

  • かけ直しがあれば最後の(?)かけ直し

  • 最終像&ICG

  • ドレーン留置があれば、そのシーン

  • SAHであれば最終の脳表の全体像など

特に当院のように血管内治療医も毎朝一緒にカンファレンスをやっている場合には,画像上の動脈瘤と母血管が、実際にはどのような状態になっているのかというのは血管内治療医にも参考になります(多分)。


腫瘍の場合

  • まず弱拡大の全体像

  • 出血しやすいかどうかなどが分かるシーン

  • 髄膜腫など良性腫瘍であれば、内減圧から剥離に移るところとか。

  • 名前の付いている構造(脳神経、動脈)などが出てくるところ

  • 最終像

(...雑? 腫瘍の種類によってストーリーを考えましょう)


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せっかく自分の時間を使って編集しているので、観る人に情報を提供できる(=学べる)ような編集をしましょう。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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