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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

超微細手術ロボット

更新日:2023年8月9日

*下書きを書いたまま忘れていた、ロボット手術の話です。


「2020年には、まだこういう風に思っていた脳外科医もいました」と振り返られるかもしれません。




脳の血管のような細い脈管はまだ外科医が縫う方が早いですが、臨床試験に入るようなロボットが出てきたというニュース。


自動で血管を縫ってくれる機械ではなく、外科医がロボットを操って血管を縫う「master-slave 型(操作する人がいてslaveであるロボットを動かすタイプ)」の手術支援ロボットでDaVinciと同じようなタイプです。


術者(操作する人)の動きの振れ幅を数分の1に縮小したり、震えの部分を打ち消すことで、術野での操作を安定させるという仕組み。


すでに日本でも広く使われている手術支援ロボットDaVinciは前立腺癌などの機能温存を改善しているほか、小切開での心臓のバイパスが可能になったり、その他の外科でも広く使われるようになっています。


*************


この研究ではリンパ浮腫に対してリンパ管吻合を行い、外科医が普通に顕微鏡で縫うのと比べ、時間はかかかったが、良好な成績を上げたということだった。


自分自身にとって、脳血管のバイパスは十八番の一つなので、軽い衝撃でした。


リンパ浮腫に対するリンパ管吻合は、実際のバイパス手術の中ではもっとも細い血管で、ほとんど透明に近い脈管を11−0とか12-0といううぶ毛より細い糸で縫合するもの。

なので、これが安定してできるというのは、治療成績の向上に繋がることが期待できます。

(ただし、リンパ浮腫に対する外科治療に関しては、効果に関して懐疑的な意見もあるようです(専門外))


そして表面の血管吻合で使えるなら、特に小児もやもや病の血管吻合は壁も薄くて難しいことも多いため、使えるかもしれません。


ただ、これが(脳外科の)実臨床で役に立つか、製品として導入されるかというと、そこは微妙だと思います。


表面の血管吻合は、極端な話、練習すればレジデントでもできることなので、それと似たような機械にどこまでお金を払うかという問題がまずあります。

(これ程度の機能であれば、すくなくとも自分の病院では要らない)


そうすると、前立腺癌のような、比較的、患者さんの数が多い病気のような大きな市場がないことになり、なかなか”こなれた”価格での上梓というのは難しいのかもしれません。


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心臓外科の渡部剛先生がDaVinciで心臓のバイパスしているビデオを見たことがありますが、針を刺す位置や間隔など「この先生はさすがに上手いなあ」と感じさせるものでした。

つまり、master-slaveの機械はmasterの能力を反映するため、底上げ効果はあるだろうけど、機械を使うのでも、やっぱり上手い術者に手術してほしいと思います。

(それがセンスか...?)


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)


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