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手術の途中で手袋を替えるのは?

執筆者の写真: 木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

WHOからの手術部位感染(SSI)に関するガイドラインが改訂された(2016年)という、Medical Tribuneの記事の中で、手術中に手袋を変える根拠はない、という勧告に言及されていた。



今更という気もするが、脳外科業界でも手袋を替える慣習があり、異動したり、他の病院に手術に行くと、例えば、ドレーピングなどが終わって手術が始まる前に新しいものに替えるよう促される。


結局、これにはあまり意味が無い(?)ということであり、無駄なコストが生じているんじゃないの?ということである。



手を消毒して1組目の手袋をつけ、手術が始まるまでに何をしているかというと、術野の周りに覆布を書けたり、手術器機の準備をしたり、顕微鏡にカバーを掛けたりということが行われる。


もちろん、不注意などにより清潔でないところに触れてしまうこともあるのだが、その場合に交換するのは仕方ない。


しかし、そういう「怪しい」イベントがないのに替えるのは、不思議な気がする。


おそらく、これらの準備の作業の間に「不潔になった可能性がある」、ということだろう。


しかし、どこかの時点で不潔になっていたのなら、”その操作”以降、触れた部分は「不潔」ということになってしまう。


清潔な手袋に替えるのだからいいのでは、と思うかもしれないが、一般論として、替えるときには中の手は、消毒直後ほど清潔ではない。


脳外科手術, 外科用手袋

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どこの医学部でも行われる実習だと思うが(検証はしていません )、細菌学の実習で手指消毒の効果をみるものがある。


手指を消毒したとき、細菌数は激減しているわけだが、毛根などに生き残っている細菌(常在菌)が必ずいる。

この常在菌が繁殖し、あるいは毛根から出てくるため手袋の中(の手)は、消毒直後ほどは清潔ではないのだ。

(手指消毒後にさらに湿式消毒を加えることで清潔な時間を長くしているのだが、本質的には無菌にならないことが重要。)

だから、明らかに不潔な場所に接触したとか、手袋に孔が開いたり破れたりした場合を除き、手袋の交換は本来必要ない。

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ちなみにマクロの操作から顕微鏡操作に入るときに、手袋を替える理由は、気分とかペースを変えるという儀式的な意味の他に、術野(ビデオ)に指が映ったときに、血が付いていると、ビデオを供覧する際に格好悪いという面もある。


これについては、手袋を濡れたガーゼで拭うことで容易にきれいにすることができるので、それだけでよいのではなかろうか。



(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

 

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