三叉神経痛は人間が経験しうるもっともつらい痛みと言われているが、今では主に4つの治療法がある。
つまり飲み薬(神経の活動を抑える)、神経ブロック、手術、ガンマナイフである。(鍼灸が一定程度有効だったという患者さんもいる)
ガンマナイフは脳外科医が専門として行っていることが多いが、前職では高齢などで全身麻酔が難しかったり、脳萎縮が強くて手術の合併症リスクが高い方にお願いしていた。
それは、ガンマナイフにも(ナイフなので当然)合併症があり、特に不快な感覚低下、異常感覚について起こる/起こらないの予測が難しいことが影響していた。
(手術に関して信用してもらっていたという面もあるだろう。)
J Neurosurg. 2010 Dec;113 Suppl:184-90.
ガンマナイフが保険適応でなかった1998年から2008年にガンマナイフを受けた105人の患者さんがどうなったか、という報告。
そのうち41人は神経ブロックを受けており、12人は手術後の方で ガンマナイフ後、平均37ヶ月(6ヶ月~121ヶ月)の記録。
ガンマナイフ後すぐのころに、全く痛みがないか、時折ぴりっと痛いけど薬を飲むほどではない方が64.4% (67人), 薬を飲めば痛くない人が24%(25人)だった。(残りの10%の人は痛い。)
平均3年(37ヶ月)後の状態は43%、薬でコントロールされている人が25%。(残りの32%は痛い)
48.6%(51人)に感覚障害(BNI-N Score II、気になるほどではない)が10ヶ月程度で出現し、そのうちの半分(27人)は症状が30ヶ月程度(16-36ヶ月)の間に悪化した。
最終診察時の感覚障害の程度としては、Score II が25% (26人)、Score III (少し気になる) 12.5%(13人), Score IV 3.8% (4人)だった。
この感覚障害に関しては、悪くなった方も、時間の経過とともに改善が見られたということなので、その点では患者さんに取っては福音となる。
ただその改善は、もとの疾患である三叉神経痛がコントロールされているかが最も関係していたということなので、痛みのコントロールがつかない方は異常感覚に関しても気になってしまうということかもしれない。
手術が一番と考える側の印象としては、手術での治療が難しい椎骨動脈/脳底動脈の直接圧迫が関与していたかどうかが気になるところだが、この点に関しては検討されていないようだ。
また、考察で述べられているが、1999年のRegisらの報告が、合併症率0%(!)というものだったのが、その後の他の施設の報告では10~40%程度となっている。
(Regisらの2006年の報告では10%。)
フランス人が特異的に、ガンマ線に都合良く感受性が高いのか、Leksell社の力なのかは明かではない。
合併症の定義をきっちりして、きちんとした経過観察を行うと、やっぱりそれくらいの合併症が起こりうる治療ということであろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。三叉神経痛に対しては可能な場合は手術が最善の治療と考えており、文中の内容にはバイアスがある可能性がある。)
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